ビジネスを飛躍させるデータドリブンの力
本記事用のカバー画像を検索する時のフレーズは[wants+needs]としたんですが、なんとまあたくさんのイメージ画像が出てくること出てくること。
洋の東西を問わず、ビジネスシーンに必ず付きまとう「ニーズとウォンツ」の知識を求めている人がどれくらい多いかということがよくわかりました。
筆者の考えるニーズとウォンツは、ピックアップした画像イメージの通りです。
商品企画・開発や広告宣伝、販売促進に携わっている方だけでなく、仕事をするすべての人々(筆者は経済人と呼びます)なら、自らの仕事を遂行する上で納品先となる上司や取引先、仕事仲間がいるはずですから、そんな広義の「顧客」も含めたスコープで、成熟市場におけるニーズとウォンツの違いやそれぞれのシーンにおける対処方法などを考えてみたいと思います。
目次
筆者の考えるニーズとウォンツとは、冒頭の画像検索結果にあったような分岐するものでもなく二元論的にどちらかが重要というわけでもなく、ウォンツ×ニーズ=契約という時系列の公式で表すことができると考えています。
80年代までによく聞こえてきたような洋楽に例えれば、
となるのでしょうか。
これが一目惚れなら、この3ステップは一気に進んでスピード婚になるのでしょうけれども、それ以外は数カ月~数年の交際期間を経て、相手をじっくり吟味した上で帰結するのが一般的かと思います。
あるいは、昭和の頃のデパートで展開された親子の会話(古)
すべての親御さんがこんなに聞き分けがいいとは思えず、誕生日やクリスマスなどのイベントまで時間を空けて、「それでも必要ならもう一度言いなさい」のようなケースが多いのではないでしょうか。
恋愛や親子の会話をビジネスに例えるなど不謹慎かもしれませんが、いずれにしても人間の営みである以上、心理学的な観点からはそんなに変わらないだろうということでご容赦ください。
なんと!
こじつけの感は否めませんが、親子関係と上司・部下の関係が逆転して、ビジネスシーンにも適用できてしまったではないですか?!
成熟市場におけるニーズとウォンツ
ここでまとめます。
この理屈に基づけば、広告の訴求方法に機能訴求と情緒訴求があるとしても、「欲しい!」と「必要だ!」のどちらに対して訴求するかは悩ましいところでしょう。
飲料・食品であればイメージ画像にしたようにシズル感なども駆使して、「飲みたい!」や「食べたい!」という「欲しい!」を喚起できればよかったのですが、これがトクホ飲料や機能性食品になると、「自分に必要だ!」と感じていただかないとならなくなるわけですね。
さらにもう一つややこしいのが、モノが行き渡った成熟市場の顧客は、具体的に「コレが欲しい!」というウォンツさえも認知していないところでしょう。
以前の記事で紹介した格言を再掲しておきます。
顧客は形にして見せてもらうまで、自分が何が欲しいのかわからないものだ。
弱りました。
ウォンツがない顧客に向けて、プロダクト=商品をどのように見せていけばいいのでしょうか?
これが高度成長期の市場と成熟期の市場との大きな違い=VUCAの時代なんだと、筆者は捉えております。
VUCA(ブカ[1][2]、ブーカ[3][4])はビジネス用語。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたアクロニム[5][4][6][7]。1990年代後半にアメリカ合衆国で軍事用語として発生したが[8]、2010年代になってビジネスの業界でも使われるようになった[8][4][7]。「今はVUCAの世界になった」というような文脈で使われることも多い。
はてさて、「ニーズ:needs」については耳にする機会も多いと思いますが、それと同じぐらい大事な「シーズ:seeds」について、一日中頭から離れないという方はそう多くないでしょう。
seed:タネですね。
※ニーズやシーズと言っても海外の人には伝わらないことがままあるので、その時は二―ドやシードと言い直してみましょう。
顧客や上司という需要サイドにウォンツ→ニーズがあったとしても、供給サイドにその需要を満たすプロダクト=商品=製品・サービスがなければ契約は成立しませんから、華麗にスルーされておしまいです。
仮に、あなたの意中の人が「好きな人のタイプは優しい人」と言っているとしても、もしあなたが「死んでも優しくない人」だったら、契約どころか仲良くなることさえできないのと一緒です。※自分ゴトで考えてます。
私たちはこのようにして、自分の趣味嗜好に合致したプロダクトを、その使用感を含めたブランドとして脳内に刻んでいます。※そうなってもらう・脳内に刷り込むための活動をブランディングと呼んだりします。
ここでいうブランドとは高級消費財に限らず、その対象としては、商品やサービス、それらを供給する企業や団体のほか、人物・建築物・史跡・地域 ・祭事など、あらゆるものが該当する。
先ほどの上司とのやり取りを、ニーズとシーズという観点で見直してみましょう。
このやり取りのスタート地点で、なぜ上司は筆者を指名してオーダーしてくれたのでしょう?
オーダーの前提になる「こないだのアレ」は当然として、より詳細なスペックとしての〇〇も◎◎も筆者が掌握していることが、上司と筆者の間における暗黙知だったからに他なりません。※ジョブ型雇用で形式知にできている場合もあり。
筆者によるブランディングが成功し、〇〇や◎◎なら筆者という刷り込みができていたということなのでしょう。
「こないだのアレ」が「〇〇が◎◎になっちゃって」という具体的なニーズに昇華した際に、「〇〇や◎◎なら筆者」というシーズが、見事にブランド想起=マッチングできたといっても過言ではないでしょう。※そんなに大げさな例えではありませんが。
忘れちゃいけないニーズとシーズ
このように、2つの三角形が一辺を接している図、ご覧になったことのある方はいらっしゃるでしょうか?
筆者が90年代に読んだビジネス書の中で、「目の付けどころが、シャープでしょ」というすてきなブランドメッセージが解説されているページに掲載されていたと記憶しているのですが、書名を完全に忘れてしまいましたので、筆者なりの解釈を添えて自作してみました。
常に顧客ニーズを考えるのだ!
なんてことを言われながら、実際にはニーズではなくウォンツを追いかけてしまい消耗している方がもしいらっしゃるなら、一呼吸おいていただいて、ニーズとシーズとのマッチングについて考えを巡らせていただくとよいのではないでしょうか。
合わせて、以前の記事で言及した「マーケットインとプロダクトアウト」もそうですが、ニーズとシーズについても単純な二元論の対立構造で考えるのではなく、最終的にマッチングできるかどうかで捉えていただくとよいでしょう。
その上で、前回の記事で紹介した「プロトタイピング」のような手法を駆使しながら、トライアル&エラーのテストを繰り返してブラッシュアップ&リバイズしていくことが大事なのではないでしょうか?
ニーズ発想とシーズ発想は、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」と言い換え、対立概念としてとられられることがよくあります。 「プロダクトアウト」と「マーケットイン」を比較して、「商品企画は、プロダクトアウトな発想ではなく、マーケットインで考えなくてはダメだ。」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
さて、この考え方は正しいのでしょうか。プロダクトアウト発想で考えてはいけないのでしょうか。
~中略~
マーケティング理論から、シーズ発想よりニーズ発想で、と言われることがあります。シーズ発想はダメで、ニーズ発想が良い、商品企画となるのでしょうか?
実際は、ニーズとシーズ、発想の原点は、ニーズ発想とシーズ発想どちらでもよい、と考えるのが正解です。しかし、顧客ニーズに合致していることは、商品企画において必須です。しかし、シーズから発想した場合でも、顧客ニーズに合致していることを、しっかり確認すればOKです。
ニーズとウォンツ、ニーズとシーズという話は、商品企画・開発だけでなくビジネスパーソン全般の共通知識であると、改めて言い切っておきます。
とは言え、ウォンツ×ニーズ=契約なら、組織の中でその知識を最も普段使いしやすいのは、実は商品企画を含めたマーケティングよりもセリング:営業シーンであることは確かでしょう。※組織全体で常に念頭に置いておけるのが理想ではありますが。
さて、営業活動においてこれらの知識を具体的に応用できるのはどんなシーンでしょう?
以前の記事でビジネスプロセスを分解した中ではその最初の工程に登場しましたが、世の中には、市場調査:マーケティングリサーチという職務領域が存在し、そんなサービスを提供する専門家集団:リサーチ会社(JMRA:日本マーケティング・リサーチ協会の賛助会員は100社超)も存在します。
マーケティングとセリングの大きな違いは、その対象者が特定多数なのか限定少数なのか(ちなみにPR:広報は不特定多数)でしょうから、特定多数を対象とした市場調査があるなら、限定少数を対象とした市場調査があってもいいはずだと筆者は考えます。
例えば、筆者が担当する Waha! Transformer の製品サイトで公開しているトピック、MA・SFA・CRMツールの導入失敗をリカバリーする3ステップでは、【ステップ1】MA・SFA・CRMの運用を「顧客インサイト」の調査活動と位置付けるとしました。
本トピックでは“顧客自身が気付いていない潜在ニーズ”を「顧客インサイト」とし、具体例としてベンチャー企業の拡販に向けてSFAを導入した際に、「失注(敗因)分析」から顧客インサイトを導き出したケースを紹介しました。
B2B・法人営業の世界では、営業パーソンのミッションを「お困りごとの調査員」としている企業もあります。
潜在・顕在ニーズとか顧客インサイトとか、ややこしい単語が増えてしまったところはひとまずスルーしてくださいませ。
ここでお伝えしたいことは、「営業パーソンの必須スキルは、限定少数を対象にした市場調査」であります。
もちろん、属人営業は脱して組織営業:チームセリングができていて、Q&Aに煮詰まった時に上司・先輩・同僚・部下・後輩たちと助け合えることが大前提ではありますが、例として以下のようなアクションもすべて、限定少数を対象とした市場調査:セリングリサーチと考えていただくのはいかがでしょう?
一つ目は明らかに、こちら側の設問に対する回答を引き出そうとしているのでリサーチっぽいですが、他の二つについてはこれから投げかける設問の前に参考情報が加わっているだけで、例えば「ありがとう!助かる!」という回答を期待してのリサーチと呼べるのではないでしょうか?
そうなると、顧客に電話した時の機嫌や雰囲気も回答の選択肢として、曜日別だったり週初め・週終わりといった変化をチャートにしてみることも価値があるかもしれません。
さらには、商談時のヒアリング項目なども標準的な設問を用意しておいて結果を集計していけば、ちょっとした「リサーチレポート」を営業ツールとして有効活用でき、「隣の芝生は青い」といつも気にしているような顧客にとっては喉から手が出るほど欲しい情報になるのではないでしょうか?
現代のマクロ経済とミクロ経済は、国境や地域・県境などを超えたグローバルな範囲で捉えますが、会社あるいはプロダクト=商品ごとのシェアや好感度を導出するようなマーケティングリサーチであれば、特定多数を対象としていることからマクロリサーチと呼んで差し支えないでしょう。
それに対して、営業パーソンの活動の一環として展開する市場調査をミクロリサーチと名付けることにします。
いずれも、視座高く・視野広く分析に取り組むという姿勢に変わりはありませんが、対象範囲の広さと深さが違うわけですね。
ここで論ずるミクロリサーチのキモは、イメージ画像のように「ふるいにかける」ということです。
営業研修や関連書籍の表現を借りれば、「購入意欲・確度を見極める」ためのリサーチです。
そんな確度を見極める手法の一つとして、同じく営業研修や書籍で登場する「BANT条件(B:予算、A:決裁権限、N:ニーズ、T:時期)」がありますが、前記したように「実際にはニーズではなくウォンツを追いかけてしまい消耗している方」が少なくないと筆者は見ています。
「確度の見極めなんて、普段の顧客とのやり取りの中で当たり前にできてます!」
そうおっしゃるあなたは、きっと四半期単位の受注目標や売上予算を10期連続ぐらいでいとも簡単に達成し続ける、優秀かつ有能な営業パーソンなのでしょう。
ちなみに、筆者が利用しているミクロリサーチツールは、Googleアラートです。
Googleアカウントでログインしていれば、自身の職務に関連する単語を登録しておくだけで、その単語が含まれるようなニュースやトピックをGoogle先生が見つけるたびに、メールで新着情報を教えてくれます。
Waha! Transformer のメンバーサイトは、「データ活用・データドリブン経営」に関連するニュースをピックアップニュースというタグで共有していますが、情報ソースは各種ニュースサイトだけでなく、Googleアラートも利用しています。
でも、これから永遠にあなた一人が会社全体を背負って、そのような「〇〇期連続達成!」を続けるのは極めて難しいでしょう。
なぜなら、人間は歳を取るからです。
経験・知見が蓄積されていく結果、10年前には初体験で感動したようなことも当たり前になっていき、若かった頃よりも時間が過ぎ去っていくスピードがどんどん速くなっていくのです。
「もう今年も年末か。。。」
そんな言葉を思わず口にしてしまうことがあったら黄色信号です。
「確度の見極めなんて、普段の顧客とのやり取りの中で当たり前にできてます!」
10年前には元気ハツラツでこう言っていたあなたでさえ、当時は聞き逃すことなど決してなかったような顧客からのシグナルを見落とすようになり、〇〇期続けた達成率にも陰りが見え始めることでしょう。
そうなることをあらかじめ見越して、数多ある顧客との会話の中であなたがふるいにかけ、見極めているポイントを調査票のように定型化・視覚化していきましょう。
さらにそれを組織営業のバイブルの中に組み込み、営業部門全員でブラッシュアップ&リバイズを繰り返していけば、市場の変化にも柔軟に対応できるばかりか、歳をとることで起こるかもしれない見落としなども防げるのではないでしょうか?
そうです。
ミクロリサーチにおけるあなたのノウハウを標準化し、日々蓄積されていくリサーチ結果という客観的な定量データに基づいて、目の前にいる顧客の状態がウォンツなのかニーズなのか、はたまたまったくその気がないのか、見極めどころを組織知として運用していけばよいのでしょう。
そうすれば、会社全体を背負っていたあなたの肩の荷もおり、自らの強みにフォーカスしながら、人生100年時代の先頭を駆け抜けていけるのではないでしょうか?※それはそれで気が重い
以上、今回も筆者の一人芝居にお付き合いいただき、衷心より御礼申し上げます。
本記事をご覧いただいて、
「よしっ!自分もデータドリブンなリサーチャーになって活躍の幅を広げるぞ!」
と感じていただいた方々は、ぜひ「Waha! Day 2021」のアーカイブ配信をご参考ください。
ETL:データ連携ツールを使って「データ活用」の仕組みを組織にインストールし、事業成長に少なからずインパクトを与えたユーザー講演など、参加登録していただいた方に配布スライドと講演動画を限定公開しています。
Webメディアのビジネス+IT主催「データ活用・分析 2022 冬」で講演したプレゼンテーション・スライドです。
マーケティング部門をはじめとするビジネス人材向けのカンファレンスにつき、内容についてはツールよりもデータ分析に取り組む人材や、データドリブン経営を推進するための組織・風土について、Waha! Transformer をご利用いただいているお客様から学んだことを中心に紹介しています。
ニーズとウォンツの違いとは?お客様を理解する上で大事な考え方
なぜ部分最適がダメで個別最適ならよいのか? ~ 組織を滅ぼす全体最適難民と決別する方法 ~
デジタル人材のいない御社が「アジャイル」でうまくいかない理由 ~ アジャイルとプロトタイピングの違い ~
鳥の目・虫の目・魚の目から学ぶ ~ デジタル人材に求められる「情報デザイン:設計」スキルとは? ~
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DXカオスから抜け出すならIT方言とはお別れしたい ~ 「上流」や「業務」って何? ~
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“データ民主化”の即効策、Waha! Transformer「Query オプション」とは
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執筆者情報:
ユニリタ Waha! Transformer チーム
株式会社ユニリタ ITイノベーション部
PM・SEに限らず多様な経験・知見を持ったメンバーが、「データ活用」という情報システム部門の一丁目一番地でお役に立つべく集められました。
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