ビジネスとITのハブとなるIT部門がやるべき4つのステップ 中編 ~課題~
前回の記事では、将来のための時間を割くことにも苦労しているIT部門において、業務を標準化・効率化しつつ時間を創出するために、行うべき4つのステップについてご紹介しました。
本稿では、4つのステップを経て時間を創出できるようになった後に、その創出した時間を使って取り組むべき内容を提言します。
目次
ビジネスとITの融合が進む中、IT部門は従来のサポート機能を超えて、ビジネスの成果向上に貢献することが求められています。
DX前提でビジネスが推進されていく中、事業運営にあたっては、サービス企画開発、セールスマーケティング、オンボーディング、カスタマーサクセスなどに注力していく必要があります。
IT部門は、基盤の提供や運用の標準化を巻き取り、セキュリティガバナンスの確保などを行って、これらを事業部門が個別に検討する手間を省き、ビジネスを加速させる役割を担い、支援します。
ここでは、ビジネスへの貢献においてIT部門が提供する価値を最大限に引き出すために、2つのポイントに焦点を当ててお話しします。
今日のビジネス環境は急速にデジタル化が進んでおり、その変化にスピーディに対応していくことが必要です。そのためIT部門は、事業部門がデジタル業務をスムーズに遂行できるようサポートしていくことが求められます。具体的には、以下の取り組みが挙げられます。
これらの取り組みにより、IT部門と事業部門の連携が深まり、ビジネスの成果を向上させるための新たなアイデアやソリューションの創出につながります。また、事業部門の効率向上と競争力の向上が期待できます。
IT部門が日常業務やプロジェクトから得た知識は、ビジネスにとって非常に有益です。IT部門は、この経験を生かして、ビジネスプロセスやサービスの向上を推進することが期待されます。それにより、組織全体の価値創造に貢献することができます。以下は、具体的なアクションの例です。
これらの取り組みにより、事業部門の業務効率化や顧客満足度の向上、新たなビジネスの創出に貢献することができます。
IT部門が創出した時間は、事業部門のデジタル化の支援や、社内業務で得られたサービスノウハウの活用など、さまざまな方法でビジネスに貢献することができます。IT部門は、事業部門との連携を強化し、新たな価値を創造するための取り組みを積極的に進めていくことが重要です。
事業部門による真のDXが進展していくと、各事業から新たな顧客向けサービスが次々に立ち上がります。やがて、立ち上げ期・成長期・成熟期といった、さまざまなステージにあるサービスが混在した状況になるでしょう。
このような状況において、経営からIT部門に求められることは何でしょうか。最後に、今後のロードマップを描くにあたって、IT部門が掲げるべき二つの戦略について提言します。
各事業が新規サービスを立ち上げ、成長させてゆく過程では、スピード感や柔軟性を重視するあまり、IaaSなどのインフラ基盤、認証基盤、セキュリティツール、CRM、販売管理、データレイク、BIツール、コミュニケーションツールなどを個別に選定して利用することが常態化しており、各サービスを横串で見た各種IT基盤の標準化やサービス品質の底上げなどのガバナンス強化策が後回しとなっています。
このような状況では、IT基盤統合による利用料のディスカウント機会などのコストメリットを失うだけでなく、サービス間の相互連携や、社員の再配置、アウトソーシングなどが困難となり、事業拡大がどこかの段階で限界に達してしまうでしょう。エンタープライズサービスマネジメントとは、ITサービスマネジメント(ITSM)の考え方を顧客向けITサービスにも拡張して適用し、各サービスが利用するIT基盤や運用プロセスの可視化と標準化を推進し、その効率的な立ち上げ・成長を支えるとともに、共通のルールや評価指標を設定して各サービスのポートフォリオ管理を行い、投下資源の全体最適化を目指す管理手法です。
実は、前回の記事で述べたIT部門社員の時間の創出アプローチは、エンタープライズサービスマネジメントの一部であり、その始め方とも言えます。事業部門がサービスを立ち上げ、事業化し、成長させてゆく過程では、ITインフラを始めとして、どんなサービスでも共通で必要とされる機能があります。
IT部門が主体となり、これらに企業標準を定めてサービスカタログ化し、事業部門に提供することで、IT部門はビジネスへの貢献度を高めることができると同時に、DXの波で手放しかけた全社的なITガバナンスの手綱を取り戻すことにも繋がります。
アフターDXにおけるIT部門の新たな付加価値として、エンタープライズサービスマネジメントの確立は重要な戦略の一つと言えます。
前述の通りエンタープライズサービスマネジメントは、IT部門が事業部門に貢献する打ち手となりますが、さらに進めると経営への貢献にも結びつく戦略となり得ます。
乱立したサービスに対し、限りある経営資源をどのようなポートフォリオで投下すべきか、その意思決定のために、経営は各サービス運営から生み出されるデータを必要としています。各サービスのセールスパイプライン、サービス利用状況、契約社数、解約率、売上、コスト、活動時間などのKGI/KPIを、サービス横串で定量的に比較評価できることが求められます。
データドリブン経営とは、サービス運営から得られたデータを活用し、データに基づいて戦略のPDCAサイクルを回し、持続的に事業を成長させる経営アプローチです。このアプローチでは、意思決定者が感覚や経験に頼るのではなく、客観的な事実に基づいた仮説設定や評価を行うことで、よりスピーディで合理的な合意形成を促します。
データドリブン経営基盤とは、このようなアプローチを効率的に行うためのIT基盤です。その構成要素としては、基幹システム、顧客向けITサービス、社内プロセスで利用する各種ツールなどからデータを収集するための連携・変換・加工機能、収集したデータを保管・蓄積・保全する機能、利活用時におけるデータの検索・可視化・配信機能などが必要となります。昨今ではデータのパターン認識や、異常値・類似性の検知など、人の代わりに気づきを提言するAIの適用も欠かせません。また、データ品質を担保するためには、マスタデータ管理、メタデータ管理(データ定義の共有化)、データ統合など、データマネジメントの機能も不可欠です。
これらの機能を企業内に統合的に提供するデータドリブン経営基盤の構築は、数あるDX施策の中でも事業成長に直結した優先度の高いテーマと言えるでしょう。
本稿では3回にわたって、IT部門が直面する課題とその解決策についてご提言させていただきました。DXの潮流において経営が求める最終的な姿を一言で表せば「データドリブン経営の実現」と言うことができます。そのためにはIT部門が主体となった「エンタープライズサービスマネジメントの確立」が欠かせません。
そこに至るための足元の課題が「IT部門社員の時間の創出」ということになります。本稿でご紹介したアプローチを実践いただくことで、日本のIT部門が再び全社的なITガバナンスの手綱を手繰り寄せるとともに、DX推進支援による事業貢献で「ビジネスとITのハブ」となって、より高付加価値な存在となることを願ってやみません。
ユニリタグループは本稿でご紹介したコンセプトの実現に資するサービスを提供し、今後も拡充してゆくことをグループ全社戦略としています。下表に関連サービスをご紹介させていただきます。詳細は各Webサイトをご参照ください。
ユニリタグループ | サービス名・詳細リンク | 概要 |
ビーエスピーソリューションズ | サービスマネジメントコンサルティング | デジタルビジネス運営に適した組織設計を早期に実現し、ビジネス展開を見据えた統括組織機能も提供 |
ユニリタ | Ranabase | 業務を可視化し、継続的に改善する方法をチームで共有 |
ユニリタ | LMIS | ITIL準拠のサービスマネジメントプラットフォームで、安定したサービスの提供を実現 |
ユニリタグループ | サービス名・詳細リンク | 概要 |
ビーエスピーソリューションズ | サービスマネジメントコンサルティング | デジタルビジネス運営に適した組織設計を早期に実現し、ビジネス展開を見据えた統括組織機能も提供 |
ユニリタ | Ranabase | 業務を可視化し、継続的に改善する方法をチームで共有 |
ユニリタ | LMIS | ITIL準拠のサービスマネジメントプラットフォームで、安定したサービスの提供を実現 |
ユニリタ | Growwwing | LTV(Life Time Value)を最大化するためのカスタマーサクセスプラットフォーム |
ユニリタ | CommuRing | 取引先やパートナー企業、顧客とのコミュニケーションを最適化 |
ユニリタSR | ビジネス・エージェントサービス | 運用設計・構築業務、運用業務の代行 |
ユニリタグループ | サービス名・詳細リンク | 概要 |
データ総研 | データマネジメントコンサルティング | お客さまのデータマネジメント実現をサポートするサービスを、データマネジメント・アセスメント結果を元にプログラム化して提供 |
ユニリタ | Waha! Transformer | さまざまな環境のデータ抽出・変換・加工・連携をノープログラミングでシームレスにつなぐETL:データ連携ツール |
ユニリタ | bindit | 毎日の単純作業を自動化 |
ユニリタ |
データ分析サービス |
各種データの分析を支援。公共交通データなどの分析実績あり |
無限 | SIサービス | 企業の業務体系に合わせたシステムの企画制作やプログラミングの構築など、これまでの作業をより効率的かつコストを抑えてニーズに合わせ提案 |
企業におけるIT 部門の現状と構造的な課題を示し、「あるべき姿」にシフトするためのステップバイステップのアプローチを提言します。
困難な道のりであるからこそ、その工程を分解してシンプルに捉え、一歩一歩着実に進んでゆくためのガイドとしていただければ幸いです。
執筆者情報:
ユニリタ DXアクセラレーションチーム
株式会社ユニリタ DXイノベーション部
DXアクセラレーショングループ
ユニリタグループのプロモーション担当チームです。
企業の経営課題である「働き方改革」と「DXの推進」の実現に向けたアプローチを「4つのステージ」として整理しました。 企業内事業部門のDXを加速させるために、日々セミナー講師や執筆を行い、情報発信をおこなっています。
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