ビジネスとITのハブとなるIT部門がやるべき4つのステップ 後編 ~あるべき姿~
本記事は、先日掲載した「基幹系システムと基幹システムの違いとは?情報系システムとは?」の続編として、日本で「PM・SE・PG」のように呼ばれる人材の役割やミッションにフォーカスしてみたいと思います。
なお、本記事において語源としてお伝えする内容は、筆者の伝聞・経験知のみで原典なども見当たらないことから、違和感を感じられる箇所があればぜひ原典を探ってみてくださいませ。
まず手始めに、日本のIT産業を俯瞰してみましょう。
Waha! Transformer 製品サイトのトピック「ERP移行・基幹系システムの再構築を成功させる5つのステップ」に掲載した図「わりと知らないIT産業マップ」をご覧ください。
“日本で「PM・SE・PG」のように呼ばれる”と述べた職種は、この図であればソフトウェア業界の閉じた世界に限って通用するであろうことは、肌感覚でご理解いただけると思います。
ところがどっこい、例として掲載した Microsoft や Oracle、SAPなどの本社の方々(外国人)と会話しても、「PM・SE・PG」といった呼称が往々にして伝わらないことがあるので要注意です。
PM:Project Manager は略さずに言えば少なくとも意図だけは理解してもらえるものの、PdM:Product Manager と混同しやすい点に注意が必要です。さらに、PG:Programmer は Software Engineer と言い換えねばならなかったり、SE:Systems Engineer に至っては語源にしたと思われる Systems Engineering:システム工学の学生や原発・発電所などのプラントづくりに携わる技術者と誤解されたりするなど、端的に説明できる呼称がないために大弱りさせられた経験があります。
なぜそんなガラパゴスな状況に至ってしまったのか、当時筆者なりに調べてみた結果をお披露目します。
それはまだ、日本でソフトウェア業界が立ち上がる少し前のこと、売上伝票や店舗で集めた顧客カードをホストコンピューターに入力する「キーパンチャー」という職種が、PM・SE・PGの先輩として生まれたそうです。
厳密にはさらにその先輩として「タイピスト」が、第二次大戦の頃から長きに渡って活躍していたわけですが、入力先がタイプライターなのかホストコンピューターなのかというところが、IT業界としての分岐点になるところでしょう。
皆さん、IBMという会社はご存知かと思いますが、「International Business Machines Corporation」の頭文字であることはご存知でしたでしょうか?
直訳すれば「国際業務用機器」になるでしょうか。タイムレコーダーや計量器、そしてタイプライターの製造会社という生い立ちだったそうですから、「タイピングの感触が秀逸」と呼ばれるIBM製キーボードにファンが多いこともうなずけますね。
そして米国では、キーパンチャーを官公庁や企業に派遣したり、データ入力業務自体を請け負う EDS:Electronic Data Systems社 が1962年に設立され、後になって創業者が私財を投じて米国大統領選に出馬するなど、この分野の先駆者として名を馳せました。
日本でも60年代には、EDSと同様の企業が「株式会社〇〇計算センター」(現在のインテックやトランスコスモス)といった社名で勃興し、その内の1社「コンピューターサービス株式会社(東京都)」は創業者のカリスマ性もあって大きく業容を拡大していき、後に「CSK株式会社」(現、SCSK株式会社)となって日本におけるITベンチャーの雄と言われました。
その当時のCSK社が、データ入力だけでなく企業向けの業務アプリケーション開発(ソフトウェアハウス事業)に業容を拡大した際に、キーパンチャーとは異なるスキルを持った人材を「ソフトウェア・プログラマー:PG」と呼称したのが「PM・SE・PG」のはじまりと筆者は考えています。
やがて、ホストコンピューターと呼ばれた汎用機・メインフレームがダウンサイジングの流れを受けてオープン化し、PCサーバーと呼ばれるコンピューターで業務アプリケーションが稼動するようになると、そのサーバーや社内LAN/WANというインフラ構築・運用の需要が生まれ、ソフトウェア・プログラミングに加えてサーバー構築やネットワーク構築まで担うSE:Systems Engineer が、PGよりも派遣単価の高い職種として誕生します。
そしてさらに、コンピューターシステムの構築や移行という作業が一人で手に負える規模を超えてしまうようになると、少なくない案件で納期までにシステムが稼動できないという炎上案件が多発するようになり、専門特化した人材の集団となった PG や SE を統括し、納期と予算と品質(QCD)を担保する責任者として、SEよりさらに単価の高いPM:Project Manager の誕生に至るわけです。
このような人材派遣メニューの構造を知った筆者は、「これはどこかで聞いたことのある人材ヒエラルキーだぞ?」と思い至り、表にまとめてみたのでした。
前述の「IT産業マップ」で薄く記した[放送]や[印刷]など、実はIT業界と近しいところにある業界に、同じような人材ヒエラルキーが存在することを知っていた筆者がまとめたのがこの表です。
最もイメージしていただきやすいと思われるのが、映画:インディジョーンズ・シリーズの第1作「レイダース 失われたアーク」が顕著かと思いますので、ルーカスとスピルバーグの役割分担を思い浮かべながらご覧ください。
責任範囲 |
新聞・雑誌 |
映画 |
テレビ番組 |
広告・Web |
日本のIT |
予算 |
編集長 |
製作総指揮 |
プロデューサー |
PM |
|
納期 |
デスク |
監督 |
ディレクター |
SE |
|
品質 |
記者、撮影 |
脚本、技術(撮影・録音)、美術 |
PG |
左から各業界の歴史の順に並べたかったのですが、インターネット・Web業界がITではなく広告・メディア業界と同様の呼称になっているようなので、あえて特異な「日本のIT」を右端に配置しました。
などなど、細かいところでは区分がややこしいところは多々ありますが、主題である「PM・SE・PG」をクッキリさせるための一覧表ということで、細かいところはご容赦くださいませ。
また、「責任範囲」については、表の上段に上がるたびに各要素が包含されていきますので、PMであれば予算・納期・品質のすべて、SEであれば納期・品質を担うと読み取っていただけるとよいでしょう。
各ポジションの役割・ミッションをまとめてみます。
日本のIT産業・特にソフトウェア業界で呼称される「PM・SE・PG」の役割・ミッションについて、主たるマーケットである官公庁や企業向けのエンタープライズIT市場をモデルケースとして考察してみます。
まず、比較した周辺業界との大きな違いは、エンタープライズIT市場の成果物が特定の団体・組織に閉じられた環境で利用されるものが主体であるのに対して、比較した業界の多くは一般消費者向け・コンシューマー市場が対象であり、広く世間の人々が接する機会を持つ成果物である点でしょう。
特に最近、ちゃちゃっと動画を撮影・編集・公開している若者の姿を見ると、エンタープライズIT市場では滅多に得ることのできないスキルを、コンシューマー市場にある無料のツール類でいとも簡単に実現できている彼ら・彼女らが羨ましく見えてきます。
そんなエンタープライズIT市場で、「PM・SE・PG」のような役割を担っている皆さんに共通して目指していただきたいのが「データ活用人材」であり、これまでのIT人材の一段上に登ろうとするモチベーションです。奇しくも、2021年9月に発足した日本政府のデジタル庁でも「データ人材」(データエンジニア、データスペシャリスト、データ戦略ポリシープランナー)が公募されていましたので、スキルセットなどおおよそのイメージはお持ちいただけると思います。
自社のシステムを管理する方々はもちろんのこと、お客様のシステム構築・運用に携わる方々は特に、コンピューターに求められる「データの入力・保管・出力」という基本的な機能が正しく動作することは大前提であるはずです。
さらに、組織内外のネットワーク上を流通するデータが、構築したシステムの目的に沿って活用できているか、使い勝手が悪かったり、システム間のデータ連携に不備や目詰まりがあったりして、利用者が使いたいデータがすぐに取り出せるようになっていなければ、せっかく皆さんが構築したシステムも、やがて「使えないシステム(屍の山)」の一つとなってしまうことでしょう。
すでに「PM・SE・PG」として活躍されている方はもちろん、これから「PM・SE・PG」を目指そうとされている方はぜひ「データ活用人材」となって、日本中どころか世界中の隅々にまでITの恩恵をひろめていってください。
最後に、
もしそんな「データ活用人材」というビジョンに共感していただけた方は、データ活用人材の祭典「Waha! Day」(ワハ・デイ)というビジネスカンファレンスをオンライン開催していますので、参加登録してみてください。
ライブ配信の終了後であっても、参加登録していただいた方向けの見逃し配信がありますので、都合のよい時にお好みのセッションを、いつでも視聴していただけます。
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クラウドシフト:SaaS/PaaS/IaaSの違いとデータ活用における注意点
DX:デジタルトランスフォーメーションのはじめの一歩はデータ連携から
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執筆者情報:
ユニリタ Waha! Transformer チーム
株式会社ユニリタ ITイノベーション部
PM・SEに限らず多様な経験・知見を持ったメンバーが、「データ活用」という情報システム部門の一丁目一番地でお役に立つべく集められました。
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