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製造業におけるデータとデジタル技術を活用するための進め方や重要なポイントを解説

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経済産業省の「製造業DX取組事例集」で紹介されているとおり、製造業ではデジタル技術やデータを積極的に活用する動きがみられます。代表的な例がスマート工場です。

スマート工場では、製造現場におけるデジタル技術とデータの活用により、生産工程の見える化や複数拠点の連携を目指します。進め方を解説するにあたり知っておきたいキーワードが、デジタイゼーション、デジタライゼーション、DX(デジタルトランスフォーメーション)の3つのステップです。

本記事では、製造業のみなさまの身の回りで起こっているさまざまな変化と、最新デジタル技術を活用した上でそこから出てくるさまざまなデータの活用について製造業DXの例も交えながら解説していきます。

製造業におけるデジタル技術とデータの活用への取り組みの変化

製造業界で、なぜ製造現場のデータ活用が広がっているのでしょうか。製造現場のデータ活用が進む背景には、製造業が長年抱えてきた課題と近年の技術革新が噛み合い、さまざまな施策を実現できるようになったことがあります。技術革新の一例として、5Gによるネットワークの安定性や速度の向上、Webカメラやセンサー、ドローンによる映像技術の向上が挙げられます。

たとえば、Webカメラは製造現場の画像データをリアルタイムに取得できるという利点から、多くの工場で導入が進んでいます。低遅延の5Gネットワークを用いて画像データをやりとりしたり、AIを用いてリアルタイムに画像解析を行ったり、Webカメラと複数の先端技術を組み合わせた事例もみられます。また、工場内の人やモノの動きをデジタル化し、生産工程を仮想空間でシミュレーションするデジタルツインの構築を目指す企業も登場しました。

経済産業省が取りまとめた「製造業DX取組事例集」では、ダイキン工業株式会社の事例が取り上げられています。[注1]

製造業のDX事例:ダイキン工業株式会社

ダイキン工業株式会社は、顧客の要望を反映させながら効率的な大量生産を行う「マス・カスタマイゼーション(mass customization)」を経営戦略の柱のひとつに掲げ、多品種混合生産などの施策に取り組んできました。

近年のIoT技術の発展により、製造現場のデータをリアルタイムに収集できるようになった結果、ダイキン工業株式会社が整備したのが工場IoTプラットフォームです。

データ活用のプロセス 要素技術
①製造現場のデータの発掘 IoTデバイス、ICタグ、PLCとPCを接続するインターフェース、
画像・音声・位置情報の電子処理
②データの収集と統合 ネットワーク、データベース、データサーバー、WLAN
③データの見える化と分析 統計解析、機械学習、AI、BIツール
④価値提供 PC、スマホ、タブレット

工場IoTプラットフォームの構築により、サプライチェーン(生産の効率化、ニーズに対応した生産計画・在庫管理)とエンジニアリングチェーン(要求分析・システム設計・コンポーネント設計)がネットワークで結びつけられます。たとえば、サプライチェーン上で生じた顧客の要望変化をフィードバックし、エンジニアリングチェーンの設計開発に取り入れるような仕組みが実現可能です。

製造業でデジタル技術とデータ活用を進める3つのステップ

このように先端デジタル技術の登場が企業に多くの選択肢をもたらした結果、経済産業省の「製造業DX取組事例集」で紹介されているようなデータ活用の取り組みに結びついています。これから製造業におけるデジタル技術とデータの活用を進めるための3つの段階的なステップについて解説します。

ステップ1:デジタイゼーション(デジタル技術で工場や生産ラインなど物理的なものの可視化)

製造業のデータ活用の第一歩がデジタイゼーション(Digitization)です。

デジタイゼーションの特徴は、デジタル技術の導入により、物理的なものを直接デジタルで表現する点にあります。製造業の場合、工場や生産ラインなど物理的なモノの可視化に取り組むことがデジタイゼーションに当たります。たとえば、仮想空間を用いたデジタルツインの構築や、Webカメラを用いたデータ収集がデジタイゼーションの一例です。

デジタイゼーションのポイント

  • 生産ラインを仮想的にデジタルで表現し、デジタルツインを構築する
  • Webカメラを導入し、工場など遠く離れた場所の状況をリアルタイムにデジタルに可視化する

ステップ2:デジタライゼーション(データ活用のためのデータ整備や外部データの付加)

デジタライゼーション(Digitalization)は、デジタイゼーションの次に進むべき段階です。

製造業におけるデジタライゼーションとは、製造プロセスそのものをデジタル化し、データ活用のためのデータ整備や外部データの付加に取り組むことを意味します。たとえば、デジタルツインを構築して生産ラインを仮想化した場合、そこにIoTセンサーで収集したデータなどをフィードバックし、生産工程を最適化する取り組みが製造業のデジタライゼーションの一例です。

製造業におけるデジタライゼーションの狙いは2つあります。

製造業における意思決定では、1つのデータではなく、複数のデータから得られた結果に高い信頼性が置かれます。製造業で利用できるデータは工場内のデータに限られません。勤怠データや会計データ、在庫データなどの複数のデータを組み合わせ、俯瞰的に分析することにより、意思決定プロセスの精度を高めることが可能です。こうした目的でデータ活用を進める場合、BI(ビジネスインテリジェンス)やBA(ビジネスアナリティクス)などを導入し、必要に応じてAIを用いたデータ処理を行います。

また、製造プロセスのデータ連携やデータ整備を目的として、デジタライゼーションに取り組む場合もあります。工場内のIoTやセンサーで収集したデータは、そのままの状態では活用できません。そのため、データの変換や加工が可能なETL(Extract/Transform/Load)や、工場内に散らばったデータを連携させるEAI(Enterprise Application Integration)などの導入が必要になります。

デジタライゼーションのポイント

  • 複数のデータから得られた結果から意思決定できるようデータ分析(BIやBA)ツールを導入する
  • そのままでは活用できないデータを変換・加工するデータ整備(ETLやEAI)ツールを導入する

ステップ3:DX(データドリブン経営の実現と新しいビジネスモデルの構築)

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、製造業のデータ活用の最終的なゴールとして位置づけられた取り組みです。

デジタイゼーションは物理的なもののデジタル化、デジタライゼーションはデータの組み合わせによるプロセスの最適化だと説明しました。製造業におけるDXは、ITやデジタルデータを生産工場に取り入れ、新しいビジネスモデルを生み出す取り組みのことを意味します。

たとえば、以下のような取り組みがDXに当てはまります。

DXの取り組み例

  • AIなどの複数の先端技術を組み合わせ、データを起点としたデータドリブン経営を実現する
  • データを特定の担当者が独占するのではなく、従業員が誰でも活用できるような形で公開し、データの民主化を実現する
  • 製造プロセスをデジタル化したり、製造現場のデータを活用したりするノウハウをパッケージ化し、他の企業に提供するビジネスモデルを構築する

まとめ

最新のITやデジタル技術の活用は、お客様に選ばれる製品を生産し続けるうえで必要不可欠な取り組みです。ただデジタル技術を導入するだけでは、製造業のDXは実現できません。工場内のさまざまな場所のデータを発掘したり、データを組み合わせて新しい価値を生み出したり、データの共有や公開を誰でもできるプラットフォーム構築が必要になります。

そのためにも、既存のITやインフラへ柔軟に対応し、1つのデータ統合プラットフォームとして運用するシステム連携基盤も欠かせません。製造業のDXとしてのゴールの一つは、製造現場のデータを起点にして、新たな製品価値を生み出すデータドリブン経営にあるといわれています。データドリブン経営に成功した企業のなかには、データ活用のノウハウそのものをサービスとしてパッケージ化し、他社に販売するビジネスモデルもみられます。

3つのステップを実践し、ご紹介した取組事例にもあるような顧客視点を意識した製造業DXの実現を目指しましょう。


[注1]経済産業省:製造業DX取組事例集
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf

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