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IT方言の「ソリューション」ほど問題解決に役立たないものはない 〜ニーズとウォンツと製品・サービス〜

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今回のテーマは、筆者が勝手にIT方言に認定している「ソリューション」であります。

さて、筆者らが暮らすIT村の一部:IT方言を使う集落では、複数のプロダクト=商品=製品・サービスを組み合わせただけの状態を「ソリューション」と呼んでしまう傾向があると捉えております。

一方、ビジネス用語としての「ソリューション」とは、イメージ画像の通り「Problem:問題」の解決に役立つものと教わった記憶がありますので、今回の記事ではそんな状況を整理してみようと思います。

なぜ、複数のプロダクトが組み合わさっただけで「ソリューション」になってしまうのか?

【参考】コンサルティングとは問題解決プロセスである

こちらの図は、以前の記事に掲載したコンサルティング:問題解決に向けた分解と統合のプロセスです。

私たち日本人が大好きなPDCAサイクルに似ていなくもないですが、問題がツリー構造などに「分解」された後にソリューション:解決策が「統合」(収斂)されていくイメージはお持ちいただけたでしょうか?

登場する5つ+1つのプロセスの頭文字をまとめれば「PACIA+V:問題解決の仮説検証サイクル」とでもなるでしょうか。

  • 問題:ploblem
  • 分析:analysis
  • 原因:cause
  • 課題:issue
  • 対策:act
  • 検証:verify

「ソリューション」と同じぐらいよく見聞きするIT方言の一つに「課題解決」がありますが、図をご覧いただければ一目瞭然、問題の真の原因が正しい仮説:アプローチによる分析によって導き出されていない場合、そこから生み出されたまやかしの課題を解決しようとすることは、まさしく絵に描いた餅であろうことは想像に難くないでしょう。

ソリューション=問題解決策もしくはその方法として、複数のプロダクトを組み合わせることには何の問題もありません。

ところが、組織や個人はそれぞれ個別具体的な問題を抱えているはずで、汎用的なプロダクトを組み合わせただけで十人十色の問題を一挙に解決できるものでしょうか?

「DX」がカオス化したのとほぼ同じタイミングでバズワード化しつつある「VUCA」の時代:複雑化した市場などと口にしつつ、その一方では顧客が抱える問題をいきなり単純化してしまい、自分本位で不完全なソリューションを提案してしまう真逆の思考は、筆者から見ると謎でしかありません。

ニワトリとタマゴで言えば、まず問題が先にあることは明らかなわけですから、それぞれ背景の異なる状況を十把ひとからげにして「ソリューション」などと軽々しく口にしてしまうことは避けたいものだと考えております。

  • 問題は誰によって発見されたのか
  • あるいは誰の問題意識が発端だったのか
  • その当事者たちは問題解決に向けてどのような課題認識を持っているのか

そこまでヒアリングできた上で、問題解決の役に立つと考えられる対策を、相手本位で提案すればよいのではないでしょうか?

などと偉そうに口にしながら「言うは易く行うは難し」、その代表例の一つが「ソリューション」なのではないでしょうか?

顧客が欲しいのはドリルではない。穴である。

この格言は、筆者が敬愛するグルのお一人、「セオドア・レビット先生」の論文・著書に掲載されたもので、同じく筆者が敬愛する「ノヤン先生のコラム」で解説されていますので、やや長めに引用します。

セオドア・レビット 偉大なるマーケティング界の巨人

以前ワシが連載していた【interneto.com】の中で「ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である」というタイトルのコラムを書いたことがあるんじゃ。

これもレビット博士の著作からの引用なのじゃが、正しく引用すると、「昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したから」というもので、1968年に発表した「マーケティング発想法」という本が出典なんじゃよ。

ドリルを買いに来た人に最適のドリルを選んであげるには、いくつかのドリルのスペックを完璧に説明すれば良いというものではなく、ドリルで開けたい穴について、穴を開ける素材や形状、その目的、ドリルを使う人のことなどを丁寧に聞く必要があるじゃろ。これはともすればプロダクトアウト(売り手都合)になりがちなマーケターの思考回路をチェックし、マーケットイン(買い手都合)に転換するには非常に効果的な問いかけなんじゃ。

ワシはこの格言を「マーケティングの世界で最も重要な格言のひとつ」と考えておるんじゃよ。

実はこの言葉自体はレビット博士の言葉ではないんじゃ。レオ・マックギブナという人の言葉をレビット博士がその著書の中で紹介したものなんじゃよ。

本記事の副題にした、~ ニーズとウォンツと製品・サービス ~が、まさしくこの格言に集約されていると言っても過言ではないでしょう。

以下ちょっと長いですが、この格言を解釈した時の筆者の妄想を小芝居にしてみます。

ここは東京・八王子、国道16号線沿いにあるDIY・ホームセンターの大型店です。

年齢50代と見受けられるご婦人が、売り場で何かを探しているようで、ちょうど品出しをしていた店員さんに声をかけました。

顧客A「あのー、電動ドリルを探しているんですけど、種類が多いからどれを選べばよいかわからなくて…」

店員A「それでしたら、ドリルであけたい穴のサイズがわかると、それに対応した商品が選べますよ。」

顧客A「あら、穴の大きさなんて調べてこなかったわ。家に帰ってカタログ見てから出直しますね。」

皆さんおわかりですね。顧客Aが探している電動ドリル、これがウォンツであります。

でも、店員Aは学生バイトさんのようで、目の前の品出し作業を終わらせることを優先してしまい、結果的には顧客Aが必要とするであろう情報として「穴の大きさ」しか伝えることができずに、顧客対応に至らぬままその場しのぎの対処が終わってしまいました。

さて、家でカタログを見直しても「穴の大きさ」がわからなかった顧客Aは、夫:顧客Bと連れ立って、もう一度ホームセンターに向かいます。

今度は、レジ周辺で棚卸しをしている様子の店員さんに声をかけました。

顧客A「あのー、先日電動ドリルを探しに来て、穴の大きさで商品が変わると聞いたんですが、カタログを見てもボルトを打ち込む穴の大きさがわからなくて…」

店員B「ちょっとカタログを見せていただけますか?ふむふむ、壁一面の棚ですね。」

顧客A「えー、娘夫婦に赤ちゃんが生まれたのを機に同居することになりまして、家をリフォームしたんです。でも、せっかく広くしたリビングの壁がもったいなくて、これから増えていきそうな小物や絵本を納めるような棚を置くことにしたんです。」

店員B「それで家具屋さんのカタログをご覧になったんですね。こちらの棚ですと、組み立て・据え付けはお客様ご自身で行う必要がありますが、そこは大丈夫でしょうか?」

顧客B「はい。中学の頃に工作程度はやってましたから、何とかなると思います。」

店員Aさん・Bさんのどちらも「なるほど、なるほど」などと口にせず、顧客と誠実にコミュニケーションしようとする姿勢には好感が持てますね。

それでも、店員AさんがBさんに変わっただけで、ほんのちょっとした会話の中から「顧客が本当に欲しいのはドリル:ウォンツではなく、リビングの壁一面におよぶ棚を据え付けること:ニーズ」であることがわかりました。

ただ、どうやらその据え付け作業はこのイメージ画像のようにお気楽なものではなく、筆者のようにベッドの組み立て程度で四苦八苦した経験を持つDIYのド素人から見れば、苦行と言えるようなものであることもわかってきました。

いよいよここからが「ウォンツ」ではなく、「ニーズ」に対する「ソリューション」の提案です。

店員B「ご主人、この棚の組み立て・据え付けは、DIY慣れしている私がやっても丸一日はかかりそうですし、転倒防止の耐震ボルトを打ち込むにしても、壁の裏にある柱に打ち込まないといけません。壁の厚さや強度は大丈夫でしょうか?」

顧客B「うっ、これってそんなに大変なの?」

顧客A「お父さん、腰や膝が痛いってよく言ってるけど大丈夫なの?」

顧客B「弱ったなー。休み休みやればできそうだとしても、何日もの間リビングを散らかしっぱなしにするのはまずいよな。」

店員B「例えばですけど、リフォームされた時の大工さんに組み立て・据え付けを頼んだ方が、完成も早くてキレイでしょうし、ボルトの打ち込みなども的を外さず簡単にできてしまうでしょうから、時間と安心を買うという意味でご検討されるのもよいのではないでしょうか?」

顧客B「確かにその手もあるなー。そんなにコストがかからないんならいいんだけど。」

顧客A「そうよお父さん、赤ちゃんが大きくなって走り回るようになったら、棚によじ登ろうとするようなこともあるでしょうから、そんな時に壁ごと崩れて大けがでもされたら元も子もないわ。」

顧客B「リフォームしてくれたのは〇〇リフォームだから、一度棟梁に聞いてみるか?!」

店員B「おー、〇〇リフォームさんでしたらうちのチェーンと提携していて私もよく棟梁とお会いしますから、今ここで私から電話してみましょうか?」

顧客B「それは話が早い!プロ同士で会話してもらって、予算も抑えてもらえたら最高だよ。」

このような妄想小噺が、筆者の考える問題解決=ソリューションに必要なヒアリングと提案プロセスの一例であります。

目の前に現れたウォンツではなく、そもそものニーズをヒアリングによって突き止めて、さらには顧客のアタマの中でも言語化されていなかった「安全性」というインサイトまで明らかにできたわけですから、〇〇リフォームさんによる実際の提案・デザイン・施工は、きっとこのご夫婦や娘さん一家も満足していただけるものになるのでしょう。

店員Bさんにとっても、電動ドリルという売上は失いましたが、家具屋さんに発生したであろう収納棚の売り上げを提携先のリフォーム会社にスイッチできるという成果は得られるはずですし、棚板やその他の資材などを自分たちのお店から仕入れてもらえれば、ドリル以上の売り上げにつながることも十分あり得るでしょう。

複数のプロダクトを組み合わせただけの「なんちゃってソリューション=ドリルと周辺資材の販売」では、顧客が期待していたような効果があるのかどうか怪しい「なんちゃって課題:ウォンツ」に対応するのが精いっぱいでしょうし、最終的な問題解決につながらなかった顧客にとってはきっと不満足が残るでしょうから、未来の顧客・売り上げを失ってしまうこと:「LTV」減少もあり得るでしょう。

本当の「ソリューション」は、誰が提案するのか?

以前の記事でも言及したニーズとウォンツを含め、ここまでお読みいただいた皆さんはお気づきかと思いますが、「ドリルではなく穴を売れ」とは、何も小売り・外食のようなサービス業の現場やマーケティング:商品企画や販売促進に限った考え方ではなく、セリング(日本ではセールス):営業はもちろんのこと、カスタマーサポート:保守の現場でも、あるいは官公庁・公共団体であっても、顧客(住民や患者・学生を含む)とプロダクト=製品・サービスとをつなげるコミュニケーションによって目的を達する職務全般で通用する格言であるはずです。

【営業必読!】あなたの「ソリューション営業」が失敗しているたった一つの理由

 マーケティングの世界には「ドリルと穴」という考え方があります。

 顧客はドリルそのもの(方法)を買いたいのではなく、ドリルを使って開けた穴(価値)を買いたいのだ、という考え方です。それも、顧客は突然、壁に穴を開けたくなるわけではありません。

「こんな家を造りたいと思い浮かべる」(理想)

「壁にラックを立てたいが、ラックをはめる穴がないと気付く」(課題)

「壁に穴を開ける道具が必要だと気付く」(価値)

「穴を開けるためにドリルを買いたいと思う」(方法)

 この流れに合致した際、初めてドリルを買うのです。

やはり筆者が敬愛するピーター・F・ドラッカー先生が、短期利益を追求する愚行に警鐘を鳴らされてきたように、「ソリューション」と口にする以上は顧客の問題:ニーズやインサイトありきで、長期的な「三方よし:Win-Win-Winの信頼関係」が本当の利益につながることを心にとどめながら、心機一転で日々のお仕事に取り組んでいきたいと考える今日この頃です。

以上、今回も筆者の小噺にお付き合いいただき、衷心より御礼申し上げます。

あとがき

最後に、あとがきの体で宣伝です。

筆者の新しい担当領域の一つ、「bindit:バインドイット」という新しいプロダクトでは、正式リリースに向けたβ版の無料トライアルにご参加いただけるビジネス人材を絶賛募集中です。

「bindit」とは、メールや電子契約、表計算やSFA/CRM、クラウドストレージなどなど、増え続けるクラウドアプリケーション間のワークフロー自動化ツールです。リンク先の「連携SaaS一覧」に掲載されたクラウドアプリケーションをお使いになっている、あなたの作業効率化にお役立てください。

bindit

宣伝の補足までに、前述のドラッカー先生がその著書「ネクスト・ソサエティ」(日本語訳はダイヤモンド社から2002年に発刊)の中で、21世紀のリーダーたちに向けて発せられたメッセージを筆者なりに要約してみます。

  • 先進国で進む若年人口の減少は致命的な社会問題である
  • その問題に抗うことが難しいなら、労働生産性を飛躍的に高めなければ経済は衰退する
  • 労働生産性を高める方法として、インターネットテクノロジーを使うことはできる

なんと!これぞまさしく、バズワードどころかカオス化してしまったDX:デジタルトランスフォーメーションの本質とさえ言えそうな提言ではありませんか?!

DXの主語である「X:トランスフォーメーション=事業変革」は難易度も高く、成果を得るには数年要するでしょうけれども、コロナ禍によって一気に進んだテレワーク/リモートワーク=働く場所改革の副次効果として脱ハンコ・脱ペーパーなどが進んだことで、DXの「D:デジタライゼーション」については、SaaSやクラウドアプリケーションによる仕事のやり方改革が絶賛拡大中です。

「bindit」は、ドラッカー先生の提言から薫陶を受けたであろう欧米先進諸国と比べて、20年以上遅れてしまった日本の第四次産業革命やデジタライゼーション促進に役立つべく、メールや電子契約、表計算やSFA/CRM、クラウドストレージといった複数のクラウドアプリケーションの間で発生するワークフローを自動連携できるようにしてくれる「iPaaS:クラウドインテグレーションツール」ですから、それ単体ではソリューションと呼べるものではないとしても、筆者の中ではドラッカー先生から発せられたメッセージに対する答えの一つになるのではないかと位置付けております。

その可能性に期待していただける方は、まずは手軽な資料請求フォームから、本記事への感想などもお寄せいただければ幸甚の限りです。

それではまた、そう遠くない将来に idearu でお会いしましょう!


参考文献・ニュース

問題の構造分析--因果関係図で構造を把握,「なぜなぜ5回」で真因つかむ

セオドア・レビット 偉大なるマーケティング界の巨人

仕事でよく聞く「ソリューション」とはどんな意味?今さら聞けない正しい使い方

課題を課題化する。「〇〇問題」というネーミングの効用

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bindit

執筆者情報:

ユニリタ bindit チーム

株式会社ユニリタ ビジネスオートメーション部

IT分野のPM・SE・PGはもちろんDXアドバイザー検定「スペシャリスト」まで加わり、多様な経験・知見を持ったメンバーが、「クラウドの民主化」というデジタライゼーション領域に結集しました。

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