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最新版ITIL 4を活用したITサービスマネジメント変革とは?|エンゲージメント強化

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前回は、従来のITIL® v3/2011 edition(以降、「ITILv3/2011」)の概念から大きく変化したITIL 4の知識体系の全体像を紹介しましたが、パート2ではITIL 4の主要概念のバリューチェーンを構成する活動領域の1つである「エンゲージ」に注目してみたいと思います。

>>ITIL 4の概要の記事はこちら

そもそも、ITIL(アイティル)って何?ということを詳しく知りたい方は、以下の記事でITILの概要やメリット、資格体系などを詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

>> ITIL®とは ~ITサービスマネジメントのフレームワーク~

サービスバリューチェーン(SVC)
図1. サービスバリューチェーン(SVC)<出典:ITIL 4>

「エンゲージ」「エンゲージメント」とは?

ITIL 4では、ステークホルダーによる価値共創がITサービスマネジメントの重要テーマですが、価値共創をうながすようステークホルダーとの関係を管理するのが「エンゲージ」の活動領域と定義されており、「すべてのステークホルダーのニーズを正しくとらえ、透明性がある良い関係を継続的に維持する」ための活動を行います。

過去においては、一般的に「タッチポイント」という言葉で、顧客やユーザとのコミュニケーションチャネルを表現していましたが、最近ではステークホルダー相互に親密な関係性を構築することを意味する「エンゲージ」「エンゲージメント」という言葉が使われるようになりました。

この「親密な相互関係」とは、サービスプロバイダ側から一方的に情報や価値を提供するのではなく、サービスを受ける側も情報を提供し価値の共創に主体的に関わることを意味します。

ITILv3/2011では、事業関係管理プロセスやサプライヤ管理プロセス、サービスデスク機能などで、「エンゲージ」に該当する活動を個々に定義していましたが、ステークホルダー間の集約された活動としては整理していませんでした。

身近にある「エンゲージメント」

少し話は横道にそれますが、婚約をした際にパートナーに贈る指輪を「エンゲージリング」と呼びますが、一方的にどちらかが相手に尽くすのではなく、二人が生涯にわたって価値を共創する関係になることを合意したことを証明するものであり、ITIL 4の「エンゲージ」にも同じ思いが込められていると思います。

同様に、最近よく耳にする「働き方改革」においても、その目的の実現には「従業員エンゲージメント」の強化が重要成功要因であると言われています。

政府主導で進められている「働き方改革」の課題は、「労働時間の短縮」や「テレワークの実現」、「業務の自動化」など、会社が一方的に考えたKPIやソリューションに偏りがちですが、「働き方改革」の本質的な課題は、労働力人口が減少する中、限られたリソースでいかに最大の効果を創出し、生産性を向上させるかにあります。

その本質的な課題に対応するには、改革を遂行する「従業員」の主体的な関与が必要であり、そのためには「従業員」が会社に対するロイヤルティ(好意的感情、信頼、精神的つながり)を持てるよう「従業員エンゲージメント」を強化することが欠かせないのです。

実際に、GAFAに代表される急成長企業では、「従業員エンゲージメント強化」によって、収益性の向上や有能な社員の採用を実現しています。

ビジネスの世界における「エンゲージメント」の状況

次に、ビジネスの世界における「エンゲージメント」の状況をみてみましょう。

一般消費者向けのビジネス(BtoC)では、スマートフォンやタブレット端末の普及により、それらを巧みに使った「エンゲージメント」の強化が進んでいます。

一般消費者が持つさまざまな「需要」に対して、スマートフォンやタブレット端末上のさまざまなアプリケーション上で、バリューチェーンの「エンゲージ」から「オブテイン&ビルド」「デザイン&トランジション」「デリバー&サポート」の活動が、バリューストリームとして実行され、「価値」を実現しています。

更に、アプリケーション上から一般消費者からのフィードバックを受け取り、そこから新たな「需要」や「改善」の機会を得て、アプリケーションのアップデートを「計画」する、というエコシステムができており、まさに価値の共創が行われています。

一方、法人向けのビジネス(BtoB)では、セキュリティ上の制限や、スマートフォンやタブレット端末から利用できないレガシーシステムが存在するなどの理由から、クライアントだけでなく社員やビジネスパートナーを含めたステークホルダーの「エンゲージメント」の強化は、まだあまり進んでいないのが現状です。

ITサービスマネジメントの「エンゲージメント」強化アプローチ

次に、ITサービスマネジメントにおける「エンゲージメント」の強化はどのように進めれば良いか考えてみましょう。

>> ITサービスマネジメントの基本的な考え方などはこちらの「ITサービスマネジメントとは」記事でおさらいしましょう。

ITIL 4では34のプラクティスが定義されており、「戦略管理」「ポートフォリオ管理」「サービス財務管理」などのビジネスマネジメントに関するプラクティスが含まれますので、「エンゲージメント」の論点は非常に多岐にわたりますが、ここではITIL 4の「指針となる原則」の中から「現在あるものから始める」に準じることとし、現在多くの組織で採用されている「サービスデスク」のプラクティスを対象にしたいと思います。

「サービスデスク」は、サービス運用におけるユーザとのコミュニケーション上の単一窓口であり、「エンゲージメント」に深く関与しています。

そこで、ITIL 4の「エンゲージ」の役割である「すべてのステークホルダーのニーズを正しくとらえ、透明性がある良い関係を継続的に維持する」を実現するために、サービス運用における「サービスデスク」に必要となる機能要件および非機能要件を整理してみると以下のようになります。

  • ユーザとサービスデスクがコミュニケーションをするための単一のデジタルツールが提供されていること
  • デジタルツールは、アクセスする端末(スマートフォン、タブレット端末、パソコンなど)やネットワーク環境に依存せず、安定して機能が動作すること
  • デジタルツールは、セキュリティ対策が十分行われており、信頼性の高いプラットフォームを採用していること
  • デジタルツールは、サービス運用に必要となる基本機能が備わっていること(インシデント管理、問題管理、サービス要求管理、変更管理、リリース管理、構成管理)
  • デジタルツール上の情報は、重複することなく一元的かつ機能横断的に管理され、サービス運用に関わるステークホルダーが、必要な情報を必要な時に、容易にアクセスすることができ、見やすい形で参照できること(ダッシュボード、レポートなど)

もし、現在のサービスデスクにおいて、上記の機能要件および非機能要件を満たしていなければ、それを改善することがITサービスマネジメント変革の糸口になるでしょう。

今回、ITIL 4の主要概念のバリューチェーンを構成する活動領域の1つである「エンゲージ」をテーマにしてITサービスマネジメントの変革のアプローチ例をご紹介しましたが、同様に他のITIL 4の知識体系を使って、まず現在のITサービスマネジメント業務の見直しを行うことをお勧めします。

次回は、ITIL 4の重要な概念の1つである「ガバナンス強化」について考えてみたいと思います。

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