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最新版ITIL 4を活用したITサービスマネジメント変革とは?|パート4:指針となる原則

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パート3では、ITIL 4の主要概念のサービスバリューシステムを構成するコンポーネントの1つである「ガバナンス」を紹介しましたが、パート4では同じくコンポーネントの1つである「指針となる原則」に注目してみたいと思います。

ガバナンスについての詳細は「パート3:ガバナンス強化」の記事をご覧ください

サービスバリューシステム(SVS)

図1. サービスバリューシステム(SVS)<出典:ITIL 4>

「指針となる原則」とは?

「指針となる原則」は、さまざまなフレームワークやガイドラインなどで採用されていますが、その特徴は、その原則に沿って行動をすれば、おのずと期待する方向に結果が生まれることにあります。

乗り物の安全性に例えると、自動車は運転者のハンドルさばき次第で事故になる可能性がありますが、電車はレールに乗っているので軌道を外れてぶつかるという事故の可能性は自動車と比較してかなり低くなります。

このレールにあたるのが「指針となる原則」であり、この原則に従っていれば、サービスバリューシステムにより実現するITサービスマネジメントの目的や目標から大きく外れる可能性が低くなるのです。

ITIL 4の「指針となる原則」は、アジャイル開発手法を採用して開発する人たちが持つべき価値観をまとめた「アジャイルソフトウェア開発宣言」に付随する「アジャイルソフトウェアの12の原則」と同等の位置付けのもので、「法律」や「規程」「ポリシー」「ルール」のように厳格に行動を縛るものではなく、自社のサービスバリューシステムを実現させるために、ITサービスマネジメントに関わる人が自律的に行動するための共通の普遍的な価値観(クレド)や行動規範と言えます。

図2はITIL 4の「指針となる原則」と「アジャイルソフトウェアの12の原則」を比較したものですが、アジャイルソフトウェア開発で採用された原則の多くがITIL 4でも取り入れられていることが分かります。

ITIL 4の「指針となる原則」と「アジャイルソフトウェアの12の原則」の比較

図2.ITIL 4の「指針となる原則」と「アジャイルソフトウェアの12の原則」の比較

「指針となる原則」の解説

ITIL 4では7つの「指針となる原則」が提示されています。

1. 価値にフォーカスする

「価値にフォーカスする」とは、サービスバリューチェーン上で実行されるすべての活動(バリューストリームとプロセス)は、直接的あるいは間接的に、プロダクトまたはサービスによる価値の実現に貢献しているか意識せよ、ということです。

また、価値の提供は、プロダクトまたはサービスを利用する顧客だけでなく、関連するすべてのステークホルダーが対象であることを意識することが重要です。

この原則が示唆するもう1つの重要な目的は、「価値提供に貢献しないリソースと活動の排除」です。

日々の業務の中で、過去から当たり前のこととして実施してきたことをあらためて見直し、まずその業務によるアウトプットが誰に対してどんな価値になっているかを確認し、価値提供に貢献しない無駄な業務であればそれを排除することで、本当に提供すべき価値の実現に必要な業務にフォーカスする、ということがこの原則に込められています。

また、この原則は他の6つの原則を実行する上でも適用される、最も普遍的で重要な原則です。

2. 現在あるものから始める

「現在あるものから始める」とは、何か新しい概念や仕組みなど組織に取り入れようと考えた場合に、いきなり今までの概念や仕組みなどを排除して新しいものに入れ替えるのではなく、まず今までの概念や仕組みを評価し、新しいものを取り入れることと同等の価値が得られる改善ができないかを検討する、ということです。

改善を検討する際に、ITIL 4の「4つの側面」である「組織と人材」「情報と技術」「パートナーとサプライヤ」「バリューストリームとプロセス」の観点と「6つの外的要因」の観点から総合的に評価し、現在あるものを活用しつつ、日々の業務への影響を最小化することに留意することが重要です。

今あるリソースを最大限に活かしつつ、無駄をそぎ落とすリーンの考え方を適用することがポイントとなります。

3. 短期間のフィードバックを繰り返し進める

「短期間のフィードバックを繰り返し進める」とは、ウォーターフォール開発ではなくアジャイル開発のアプローチを取る、ということです。

やるべきことすべてを一度に実現するような計画を立てるのではなく、優先度が高く、かつステークホルダーが期待する成果を短期間で得られることから着手し、得られた結果をステークホルダーと一緒に評価し、フィードバックをもとに次にやるべきことを決め、それをアジャイル開発のスプリントをまわすイメージで繰り返します。

評価とフィードバックにおいて、「価値にフォーカスする」の原則を適用することも重要です。

4. コラボレーションと可視化を推進する

「コラボレーションと可視化を推進する」とは、サービスバリューシステムに関わるすべてのステークホルダーが、バリューストリームやプロセスにおいて直接的に関わらない活動においても、活動の状況やアウトプットを全員が理解可能な形で可視化するとともに、主体的に関与しお互いに協力する(コラボレーション)することで、新たな価値の創造が期待できる、ということです。

ここで注意すべきことは、コラボレーションとは、すべてのステークホルダーのコンセンサスを得ることではなく、バリューチェーンが提供する価値の実現を基準として意思決定を行う、ということです。

つまり、ここでも「価値にフォーカスする」の原則を適用することが重要ということです。

5. 全体的な視点で考え行動する

「全体的な視点で考え行動する」とは、例えばある特定のバリューストリームをデザインする場合に、そのバリューストリームが提供する価値だけにフォーカスするのではなく、そのバリューストリームが属するバリューチェーンへの影響や、さらにサービスバリューシステムへの影響を考慮するというように、常に全体最適を意識する、ということです。

この原則を効果的かつ効率的に実践するためには、バリューストリームやプロセスのデザインを標準化し可視化するテンプレートやツールの導入が有効です。

また、サービスバリューシステム全体を構造的に可視化するために、TOGAF ®標準などを参考としてエンタープライズアーキテクチャを体系的にデザインすることも有効です。

6. シンプルで実践的であること

「シンプルで実践的であること」とは、本当に提供すべき「価値にフォーカス」し、その価値に貢献しないサービスや、機能、プロセス、活動、指標、レポート、ルールなど冗長なものはすべて排除する、ということです。

具体的には、以下のようなことを実践することです。

  • 複数に分けて実行しているプロセスを1つに統合する
  • 複数のレポートから意思決定に必要な情報のみ抽出してダッシュボードにする
  • 運用チームが作成しているレポートを、レポートを利用するチームが自分で作成できるようにする
  • 顧客ごとにカスタマイズして提供しているサービスを共通サービスとして1つまたは幾つかにパターン化したサービス体系にする(サービスレベルの集約)

7. 最適化と自動化を推進する

「最適化と自動化を推進する」とは、ITIL 4の「4つの側面」である「組織と人材」「情報と技術」「パートナーとサプライヤ」「バリューストリームとプロセス」の観点と、「6つの外的要因」の観点で、サービスバリューシステム内に存在するすべてのリソースとケイパビリティ(バリューストリームとプロセスを含む)の有効性と効率性を最適化し、提供する価値を最大化する、ということです。

また、自動化は最適化されシンプルでリーンになったバリューストリームとプロセスに対して適用をする必要があります。

この原則は、「現在あるものから始める」「価値にフォーカスする」「シンプルで実践的であること」「全体的な視点で考え行動する」「短期間のフィードバックを繰り返し進める」の原則と合わせて実践することで最適化が促進されます。

「指針となる原則」の実践方法

これまでITIL v3/2011を活用してITサービスマネジメントを実践されている組織では、現在組織内に実装されている機能とプロセス活動において、「指針となる原則」が実践されているかの検証を行い、さらなる改善の糸口を探ることから始めることをお勧めします。

この時、原則1つ1つを個々に検証するのではなく、7つの原則を総合的に検証することが重要です。

この検証活動に対しても、「コラボレーションと可視化を推進する」の原則を適用し、機能やプロセスに直接関わる人だけでなく、可能であれば顧客やユーザ、さらに外部パートナーも交えて検証することで、ステークホルダーに対する新たな価値提供につなげることができることでしょう。

今回、ITIL 4の主要概念のバリューシステムを構成するコンポーネントの1つである「指針となる原則」をテーマにしてITサービスマネジメントの変革アプローチをご紹介しました。

次回のパート5では、各組織において、ITIL 4をベースにしてどのように自社に適したITサービスマネジメントに「テーラーメイド化」するかを考えてみたいと思います。

TOGAF®標準はThe Open Groupの登録商標です。

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