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サブスクリプションビジネスでLTVを高めるためのオンボーディングの必要性

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サブスクリプションビジネスを成功に導くためには、顧客生涯価値(ライフタイムバリュー:LTV)の最大化が欠かせません。LTVを高めるための効果的な施策の1つが、ユーザーにサービスの魅力を理解してもらう「オンボーディング」のプロセスです。この記事では、オンボーディングの重要性や、オンボーディングに取り組む際のポイントについて、わかりやすく解説します。

サブスクリプションビジネスの「オンボーディング」とは?
サービスの魅力を伝える導入プロセス

サブスクリプションビジネスにおけるオンボーディング(on-boarding)とは、SaaSとして提供されるサービスのユーザーの定着率を高め、リピーターを増やすための重要なプロセスです。サービスの利用を開始したばかりの新規顧客を対象とし、サービスの導入支援やスタートアップ、機能・使い方・操作方法のティーチングを行います。オンボーディングには、たとえば次のようなものがあります。

チュートリアル 実際にサービスを使ってもらいながら操作方法を学んでもらう
ウォークスルー スライドを使用し、サービスの使い方を段階的にレクチャーする
コーチマーク サービス画面に矢印や吹き出しを表示し、視覚的に機能を説明する
チェックリスト サービスを効果的に使うためのアクションリストを提示する
設定アシスタント プログレスバーを使い、設定完了までの進捗状況を表示する

オンボーディングのプロセスでは、サービスの契約開始から、ユーザーが成果を得るまでの期間を可能な限り短縮することで、「このサービスを使いつづけたい」「このサービスなら目的を達成できる」という顧客体験を創出することを目指します。人事分野でのオンボーディング(=新人研修)と区別し、サブスクリプションビジネスでは「ユーザーオンボーディング」と呼ばれることもあります。

オンボーディングが重要な3つの理由

サブスクリプションビジネスにおいて、なぜオンボーディングが重要なのでしょうか。オンボーディングはLTVを高め、サブスクリプションビジネスを成功に導くために必要不可欠なプロセスである3つの理由を解説します。

理由1:LTVの最大化につながる

SaaSの多くはサブスクリプションモデルとして定額料金制を採用しています。そのため、収益を得るには「契約したら終わり」ではなく、ユーザーにサービスを長期間利用してもらう必要があります。つまり、ユーザーの契約期間全体を通じて得られるLTVの最大化こそが、サブスクリプションビジネスを成功に導くためのポイントです。

>>サブスクリプションモデルについてはこちらの記事で詳しく解説しています

オンボーディングの実施はLTVの最大化につながります。サブスクリプションビジネスにおいて、LTVの代表的な計算方法は次のとおりです。

LTV=平均顧客単価×サービスの利用期間

オンボーディングによって、サービスの魅力をすばやくユーザーに伝えることができれば、サービスを長く利用してもらえる可能性が高まり、サービスの利用期間が伸びれば、比例してLTVも上昇します。サブスクリプションビジネスのLTVを高めるには、まずユーザーオンボーディングに取り組むことが効果的です。

理由2:チャーンレート(解約率)が減少する

サービスを継続して利用してもらうためには、チャーンレート(解約率)を減らすことも大切です。オンボーディングを改善すれば、チャーンレートの減少にもつながります。カスタマーサクセス分科会によるアンケート調査では、チャーンレートの改善にもっとも効果のあった施策として、「オンボーディングによる伴走強化(37.5%)」が挙げられています。[注1] 別の調査でも、サービスを通じて得た顧客体験の良し悪しが、チャーンレートに大きく影響していることがわかります。ハーバード・ビジネス・レビューの調べでは、10段階のうち1の顧客体験を得たユーザーのうち、1年後もサービスを継続した割合は43%にすぎません。逆に、9~10の高いカスタマーエクスペリエンススコアを記録したユーザーのチャーンレートは低く、74%のユーザーが翌年以降もサービスを継続しています。[注2] オンボーディングによって顧客体験を高め、チャーンレートを下げることが、LTVを最大化するもう1つのポイントです。

理由3:顧客単価が向上する

LTVを最大化するためには、サービスの利用期間に加えて、月額の利用料金(=顧客単価)を上げる必要があります。よりグレードの高いサービスへ乗り換えてもらう「アップセル」、関連性の高い別の機能を使ってもらう「クロスセル」により、顧客単価を引き上げることが可能です。上記のLTVの計算方法を言い換えると、次のようになります。

LTV=月額(年額)の利用料金×サービスの利用期間

オンボーディングによって、サービスの利用開始から最初の成功までの期間を短縮することで、ユーザーはさらなる成功体験(=カスタマーサクセス)を求めるようになります。ユーザーオンボーディングに合わせて、丁寧なアップセルやクロスセルの提案を行うことで、さらなる顧客単価の上乗せが可能です。実際に、ハーバード・ビジネス・レビューの調べでも、カスタマーエクスペリエンススコアが低いユーザーと比べ、顧客満足度が高いユーザーは2.4倍もの金額を消費していることがわかっています。[注2]

オンボーディングを成功させるための3つのポイント

それでは、オンボーディングを成功させるためにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。オンボーディングの3つのポイントを解説します。

ポイント1:サービスの魅力をコンパクトに伝える

オンボーディングの目的は、ユーザーが最初の成功体験を得るまでの期間を可能な限り短縮することです。単なる機能説明にとどまらず、「サービスを導入することで、どのような効果を得られるのか」「どうすればサービスを使いこなし、メリットを引き出せるか」といったベネフィットベースの説明をしましょう。オンボーディングはマニュアルではなく、サービスの魅力を伝えるための機会だと捉えなければなりません。

また、サービスの魅力を長々と説明していては、ユーザーが離脱する可能性が高くなります。ユーザーがサービスの魅力を瞬時に理解できるよう、単純明快でコンパクトな説明を心がけることも大切です。わかりにくいオンボーディングになっていないか、一度見直してみましょう。

ポイント2:「ユニーク」な体験の提供を心がけよう

サブスクリプションビジネスの市場が活発化したことで、よく似たサービスが増えてきました。ユーザーはサービスを比較しながら、「より自分の目的に近いサービス」や「より便利な機能を持つサービス」を探しています。競合他社のサービスと差をつけるためには、オンボーディングのプロセスにおいて、自社のサービスでしか得られない「ユニーク」な体験をアピールすることを心がけましょう。

ポイント3:定期的なフォローアップを忘れずに

サービスの利用を継続してもらうためには、ユーザーの疑問や不満を解消するためのカスタマーサポートが必要です。とくにサービスに多額の収益をもたらす「ハイタッチユーザー」に対しては、個別のサポート対応を実施し、チャーン(解約)を回避するためのフォローアップを行っていく必要があります。サービス上のチュートリアルやウォークスルーだけでなく、Webセミナーや勉強会、ハイタッチユーザーへの企業訪問なども組み合わせ、手厚いフォローアップを行いましょう。

まとめ:オンボーディングを実施し、サブスクリプションビジネスのLTVを最大化しよう

サブスクリプションサービスのLTVを最大化するためには、オンボーディングの実施が効果的です。オンボーディングによって、サービスのチャーンレート(解約率)を下げ、アップセルやクロスセルにより顧客単価を上昇させることが可能です。オンボーディングは単なるサービスの機能説明ではありません。サービスの魅力をコンパクトに伝え、他社のサービスにはないユニークな体験が得られることをアピールしましょう。それに加え、カスタマーサポートにも取り組み、定期的な顧客のフォローアップを行うことも大切です。

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参考

[注1]HiCustomer株式会社:チャーンレート改善にはどの施策が効く? — 国内カスタマーサクセスの現状を調査しました
https://media.hicustomer.jp/research/2018-survey

[注2]Harvard Business Reveiw:The Value of Customer Experience, Quantified
https://hbr.org/2014/08/the-value-of-customer-experience-quantified

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