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アップセル・クロスセルを行う前に、まず顧客情報の把握から

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サブスクリプションビジネスの収益増加につながるのが、「アップセル/クロスセル」です。しかし、強引なアップセルやクロスセルを行うと、かえって顧客離れを起こす原因となってしまいます。アップセル/クロスセルを行う前に、まず顧客データを分析し、顧客ニーズに合った提案をしましょう。この記事では、アップセル/クロスセルが重要な理由や、分析すべき顧客データについて解説します。

サブスクリスプションビジネスの業界の流れは?1社あたりのLTVがポイント

「SaaS業界レポート2019」によると、国内のSaaS市場規模の年平均成長率は約12%で、2023年度には約8,200億円の大台に乗ると予測されています。[注1]急成長をつづけるサブスクリプションビジネスの世界で、SaaS企業は売り上げ増を達成するため、どのような経営戦略をとっているのでしょうか。例えば、サブスクリプションビジネスを通じ、年間経常収益(ARR)10億円を目指すと仮定してみましょう。1社あたりの平均年間契約額(ACV)と、必要な顧客数の関係は次の表の通りです。

平均年間契約額(ACV) 必要な顧客数
10万円 10,000社
25万円 4,000社
50万円 2,000社
100万円 1,000社
250万円 400社
500万円 200社
1,000万円 100社
1億円 10社

平均年間契約額(ACV)と顧客数は反比例の関係です。もしACVが10万円の場合、年間売り上げ10億円というゴールを達成するためには、10,000社の顧客を集める必要があります。しかし、ACVを500万円に伸ばすことができれば、顧客数は50分の1の200社で済みます。

サブスクリプションビジネスについてはこちらの記事で詳しく解説しています >> サブスクリプションモデルのビジネスとは?

売り上げ増を達成するため、SaaSサービスの契約社数を増やすのも1つの手段です。しかし、競合他社が多いサブスクリプションビジネスの市場で、マーケットシェアを1社が独占するのは現実的ではありません。例えば、米国の顧客管理システム(CRM)のシェアナンバーワン企業であるSalesforceの市場シェア(2016年)は18.1%です。2位のOracleは9.4%、3位のSAPは7.2%しかありません。[注2]マーケットシェアを独占しようとするよりも、1社あたりのACVを改善していくのが、より現実的な経営戦略です。

つまり、サブスクリプションビジネスで成功するためのポイントは、どうやって1社あたりの平均年間契約額(ACV)を増やしていくのか。ひいては、1社との顧客関係から得られる「顧客生涯価値(LTV:ライフタイムバリュー)」をどうやって最大化するかという点にあります。多くのSaaS企業は、1社あたりのLTVを高める経営戦略をとっています。LTVは次の計算式で求めることができます。

LTV=平均顧客単価×サービスの利用期間

計算式の通り、LTVを最大化するうえで、平均顧客単価を増やしてACVを高めるか、チャーンレート(解約率)を減らして利用期間を増やすか、2つの戦略が存在しています。例えば、平均顧客単価を増やす方法として、利用料金の値上げや、支払金額の多い中堅・大手企業をターゲットとしたサービスの訴求などが挙げられますが、サブスクリプションビジネスにおいて特に効果的なのが、アップセル/クロスセルの提案です。

アップセル/クロスセルに重要な前提条件は「顧客ニーズを知ること」

アップセルとは、既存の顧客に対し、より高額なプランへ乗り換えてもらうことを意味します。もうひとつのクロスセルは、関連性の高いサービスを顧客に追加契約してもらうことです。

アップセル 高額なプランへの乗り換えを提案する
クロスセル 関連性の高い機能やサービスの追加契約を提案する

しかし、アップセル/クロスセルの押し売りになってしまっては、かえって顧客満足度を下げ、チャーンレート(解約率)を高める結果となってしまいます。重要なのは、顧客情報を分析したうえで、本当にアップセル/クロスセルを必要としている顧客にアプローチを仕掛けることです。ここでは、アップセル/クロスセルを提案するうえでの課題や、事前に取得すべき顧客データについて解説します。

アップセル/クロスセルのよくある2つの課題

アップセルやクロスセルを成功させ、平均顧客単価を上昇させるためには、まず「顧客ニーズを知ること」が前提条件です。しかし、顧客データの活用において、SaaS企業には次の2つの課題が散見されます。

  • 顧客データを蓄積するための体制が整っていない
  • どの顧客データを分析すべきかわかっていない

まず、顧客データベースをはじめとして、顧客の属性や購買傾向を把握するための体制が整っていないケースがあります。実際に百貨店業界では、顧客データを蓄積する仕組みやノウハウがなかったため、ネット通販サービスの展開に相次いで失敗しています。顧客データを蓄積する体制が整っていない場合は、CRM(顧客管理システム/顧客関係管理システム)を導入しましょう。CRMとは、顧客データベースに加えて、顧客へのアンケート調査や、顧客データのレポート機能を持つソフトウェアです。CRMを導入することで、顧客1人ひとりとの関係性を「見える化」し、目に見えない購買ニーズを知ることができるようになります。

一方で、CRMを導入しただけで、アップセルやクロスセルがうまくいくわけではありません。CRMを使い、顧客の属性を把握するためには、本当に必要な顧客データを分析する必要があります。アップセル/クロスセルを成功させるためには、顧客データベースの活用だけでなく、顧客データの選別も大切です。

顧客ニーズを把握するうえで取得するべき3つのデータ

それでは、顧客ニーズを把握するうえで、どのようなデータを取得すればよいのでしょうか。アップセルやクロスセルを最適化するためには、どのような属性を持つ顧客が、どのようなサービスを好んでいるかを「見える化」する必要があります。顧客の属性とサービス内容の関連性がわかれば、同じ属性を持つ顧客層に対し、アップセル/クロスセルを仕掛けていくことが可能です。

そのためには、次の3つの顧客データを収集しましょう。

  • 顧客情報
  • 顧客購買履歴
  • 顧客の声(VOC)

顧客情報とは、氏名・住所・年齢・家族構成・年収・職歴をはじめとした、顧客1人ひとりを区別するための定量データです。SaaSサービスの場合、顧客情報は会員登録時の登録フォームか、Web上のアンケート調査などを通じて収集するのが一般的です。一方、顧客購買履歴とは、「どの顧客がどのサービスを利用しているか」「どの顧客が何年間サービスを継続しているか」といった購買行動に関するデータを意味します。そして、もう1つ大切なのが、アンケートやコールセンターの応答記録から得られる「顧客の声(VOC)」です。定性データであるため、データ分析に手間がかかりますが、より正確に顧客ニーズを把握できます。

この3つのデータを結びつけることで、より丁寧なアップセル/クロスセルが可能になります。例えば、特定の年齢層や年収レベルの顧客の利用頻度が高いサービスがあれば、同じ属性を持つ顧客層に対し、アップセルを仕掛けられます。また、サービスAを契約している顧客の多くが、サービスBも同時に契約しているならば、サービスAの契約者に対し、サービスBのクロスセルを提案できます。アップセルやクロスセルを成功させるためには、顧客1人ひとりの特徴を把握する必要があります。顧客データの分析により、丁寧なアップセル/クロスセルを提案し、平均顧客単価を高めましょう。

まとめ:アップセル/クロスセルを行う前に顧客ニーズの分析を

SaaS企業の多くは、1社あたりのLTVを最大化する経営戦略をとっています。サブスクリプションサービスのLTVを最大化するには、ユーザーの継続年数に加えて、平均顧客単価の改善が必要です。顧客データの分析に基づく丁寧なアップセル/クロスセルにより、1社あたりの平均年間契約額(ACV)を増やしましょう。


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澤田 大輔

執筆者情報:

澤田 大輔(さわだ だいすけ)

株式会社ユニリタ
クラウドサービス事業本部 ITマネジメントイノベーション部
サービスマーケティンググループ

IT部門におけるITILの活用だけでなく、ITを基盤としているサービスにおいてのITILの活用、その先にある顧客満足度の向上のためのプロセスモデルを発信しています。
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