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コロナ禍を乗り越えるサブスクリプション ~ニューノーマル時代のビジネスモデル~

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるう中、日本のビジネス環境は大きく変化しました。サブスクリプションビジネスも例外ではなく、withコロナ時代の「ニューノーマル(新しい日常)」に対応しながら、ビジネスモデルを柔軟に変化させていく必要があります。この記事では、コロナ禍を乗り越えるためにSaaS企業がとるべき戦略・アクションについて、データを紐解きながら解説します。

サブスクリプションビジネスへの新型コロナの影響は?53.3%の企業は「影響なし」

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の蔓延により、国内経済は大きな打撃を受けています。労働政策研究・研修機構の調べによると、2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前期比-7.8ポイントの減少となり、2008年9月のリーマンショック当時よりも大きな下げ幅となりました。[注1]新型コロナは、サブスクリプションビジネスにどのような影響を与えているのでしょうか。

実は、サブスクリプションサービスの関連企業の場合、新型コロナの影響はそれほど大きくありません。Zuora Japanの調べによると、サブスクリプションサービスの加入者獲得率を分析したところ、依然として新規契約数が増加しつづけているSaaS企業は、全体の半数を上回る53.3%でした。むしろ、解約数が加入者数を上回ったSaaS企業が11.4%にとどまるのに対し、加入者数の成長が新型コロナのパンデミック前よりも加速した企業は全体の22.5%に達しています。[注2]

新型コロナの感染拡大がサブスクリプションビジネスに悪影響を与えず、むしろ新規契約者数の増加につながった理由はなんでしょうか。1つの要因として、withコロナ時代の消費行動の変化が挙げられます。緊急事態宣言の発令による外出自粛要請や、テレワークの推進、小中高校の臨時休校による在宅時間の増加により、「巣ごもり消費」と呼ばれる消費トレンドが出現しました。三井住友カードの調べでは、新型コロナのパンデミック後に、オンラインサービスに関連した「ECモール・通販」「通信サービス」などの項目の支出が増加しています。2020年3月の「ECモール・通販」関連支出の伸びは前年同月比6.7%、「通信サービス」関連支出は前年同月比6.5%の増加でした。[注3]コロナ禍での在宅時間の長期化が、SaaSを始めとしたインターネットサービスの売上増加に結びついています。

withコロナ時代に成長率が加速した3つのサブスクリプションサービス

withコロナ時代に新規契約数の増加が加速し、さらに成長したサブスクリプションサービスは3つあります。NetflixやHuluを始めとした「ビデオストリーミング」や、有料記事を配信する「デジタルニュース&メディア」、在宅での学びを提供する「e-ラーニング」系のサブスクリプションです。

とくにビデオストリーミングサービスは、「巣ごもり消費」という消費トレンドの出現により、大きく新規契約数を伸ばしました。インプレス総合研究所の調べでは、無料動画配信サービス、有料動画配信サービスともに視聴数が増加しています。2019年度の有料動画配信サービスの利用率は16.0%ですが、2020年5月の調査時点で、利用率は5.1ポイント増の21.1%に増加しています。[注4]デジタルニュース&メディア部門は、新型コロナ関連のニュースへの関心増加から、大きく訪問者数を増やしています。また、e-ラーニングソフトウェアの新規契約数が増加した理由は、教育機関の閉鎖により、自宅で教育を行うニーズが高まったためです。

サブスクリプションサービスにおける3つの業界のアクション

多くの企業が新型コロナへの対応を迫られる中、SaaS企業はどのようなアクションをとっているのでしょうか。「ソフトウェアおよびハイテク」「メディア」「一般消費者向け会員サービス」の3つのセグメントに分け、各企業のアクションを紹介します。

1. ソフトウェアおよびハイテク:カスタマーサクセス部門を強化

「ソフトウェアおよびハイテク」部門には、企業や事業者向けのソフトウェア、オンラインコミュニケーションツール、e-ラーニングソフトウェアなどが含まれます。e-ラーニングを除き、契約1件あたりの収益は成長を続けているものの、新規契約数や既存顧客へのアップセルの伸びは減速しています。顧客のサブスクリプションサービスへの支出がより限定的になるという予測から、SaaS企業はカスタマーサクセス部門を強化し、他社への競争優位性を確保しようとしています。長期契約を結んだ顧客へのディスカウントや、サービスを一時中断したのちに再開できるオプションの提供といった、既存顧客の流出を防ごうとするアクションが見られます。とくに、サービスを再開できるオプションを提供している企業は、そうでない企業と比べ、年間解約率が5%減少しています。[注2]

2. メディア:新規顧客の獲得から既存顧客のりテンションへ

「メディア」部門には、ビデオストリーミングサービスや、デジタルニュース配信サービスなどが含まれます。過去3カ月間のビデオストリーミングサービスの新規契約数は400%の増加、デジタルニュース配信サービスは110%増加で、withコロナ時代に多くの新規サブスクライバーの獲得に成功しました。[注2]以後は、さらに魅力的なコンテンツや、顧客にパーソナライズされたサービスを提供し、増加したサブスクライバーを維持しようとするアクションが予測されます。また、新規サブスクライバーの増加を背景として、従来は広告収益に依存していたメディア企業が、リカーリングレベニュー(継続収益)への転換を目指す動きが出ています。

3. 一般消費者向け会員サービス:オンラインでの価値提供を目指す

ジム、映画館、美術館のような実在の施設に紐づく「一般消費者向け会員サービス」は、サブスクリプションビジネスのなかで唯一のマイナス成長を記録した項目です。契約1件あたりの収益は-27%のマイナス成長、新規契約数の伸びは30%の減速となっています。[注2]リアル店舗でのクラスター発生への警戒や、不要不急の外出を避ける動きから、消費が一気に冷え込んだことが原因です。そのため、リアル店舗のみでサービスを提供するのではなく、オンラインでの価値提供を目指す企業が増えています。たとえば、アメリカの人気フィットネスサブスクリプションのPelotonは、在宅でインストラクターの指導が受けられるオンラインサービスを提供し、2020年1~3月期に66%の増収を達成しました。withコロナ時代のサブスクリプションモデルは、オンライン/オフラインの双方で新たな顧客接点を作り出す努力が求められます。

まとめ:消費行動の変化への対応が、withコロナ時代のサブスクリプションを成功に導く

新型コロナの感染拡大を受け、サブスクリプションビジネスは変化を求められています。サブスクリプション全体の新規契約数は増加傾向にあるものの、リアル店舗に紐づく「一般消費者向け会員サービス」は、唯一のマイナス成長を記録しました。withコロナ時代のサブスクリプションビジネスは、契約を柔軟に変更できるオプションを提供するなど、既存顧客のリテンションに努める必要があります。また、「巣ごもり消費」に伴う消費者の行動変化に対応し、新たな顧客接点を作り出していかなければなりません。

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参考

[注1] 労働政策研究・研修機構:新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c12.html

[注2] 株式会社メディアイノベーション:サブスクリプションビジネスにおける新型コロナウイルスの影響…影響を受けていない企業が半数
https://media-innovation.jp/2020/04/14/subscription-report-by-zuora/

[注3] 三井住友カード:コロナ影響下の消費行動レポート ~高年齢層のECサイト活用加速と変化する巣ごもり消費~
https://www.smbc-card.com/company/news/news0001527.jsp

[注4] インプレス総合研究所:動画配信ビジネス調査報告書2020
https://research.impress.co.jp/report/list/video/500975

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