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製造業におけるリスキリングの重要性

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リスキリングとは、日本語で「職業能力の再開発」といい、今後求められる能力やスキルに合わせた学び直しを意味する言葉です。

2023年1月23日に行われた施政方針演説で、首相が改めてリスキリング(Reskilling)の重要性を強調しました。施政方針演説で「GX、DX、スタートアップなどの成長分野に関するスキルを重点的に支援する」という発言があったように、リスキリングはDX時代の人材戦略として注目されています。[注1]

とくに、リスキリングの重要性が叫ばれているのが製造業です。製造業はDX時代に取り残されないため、今後収益が見込める業種を見極めて、従業員のリスキリングを積極的に促す必要があります。本記事では、リスキリングの重要性や最先端事例、製造業におけるリスキリングの進め方を解説します。

リスキリングの重要性と最先端事例

2022年のユーキャン新語・流行語大賞では、リスキリング(Reskilling)がノミネート30語のなかに入りました。なぜリスキリングに注目が集まっているのでしょうか。リスキリングに関連した最先端事例をみると、従業員の職業能力の再開発に取り組むべき理由が分かります。

リスキリングは、DX時代を生き延びるための人材戦略です。2021年の調査で、日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中27位と後退しました。[注2]
デンマークやアメリカの事例を参考にしつつ、日本の企業もリスキリングに向けた方針転換が必要です。

デンマークの職業訓練の事例

デンマークは1960年代より、従業員を解雇する柔軟性(フレキシビリティー)と、従業員の再就職を支援する安全性(セキュリティー)を組み合わせた「フレキシキュリティー」という独自の労働モデルを実践してきました。フレキシキュリティーの柱のひとつが、失業保険とリスキリングを組み合わせ、失業者が再就職活動に取り組まないと失業保険の支給額が減額される制度です。

制度導入にともない、デンマークは3000種類以上の職業訓練を実質無料で提供するプラットフォームを整備しました。こうした制度により、デンマークは10%前後で高止まりしていた失業率の改善に成功しています。

デンマークの画期的な労働政策は、労働生産性や実質賃金にも好影響を及ぼしています。デンマークは人口が600万人弱と、日本の人口の約20分の1にも満たない小国家です。しかし、2021年のデンマークの時間当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中4位となり、日本を大幅に上回っています。[注2]

デンマークの労働政策への支出(2019年度)はGDP比で約2.8%に達し、日本の支出額の約9倍です。職業訓練に関する支出のみを抜き出しても、GDP比で約0.01%の支出額にとどまる日本に対し、デンマークは約0.36%と大きな差があります。[注3]

アメリカは430以上の企業がリスキリングに着手

アメリカでもリスキリングに向けた動きが本格化しています。2018年7月には、米国労働者のための国家会議(National Council for the American Worker)が創設され、リスキリングや職業訓練に関する国家戦略が策定されています。また、当時のトランプ大統領は民間企業に対し、2025年までにリスキリングの機会を提供することを求めた「労働者への誓約(Pledge to America's Workers)」への賛同を呼びかけました。

2020年8月の時点で、430以上の企業がリスキリングの機会を提供することに同意しています。[注4]デンマークと同様に、アメリカでも官民連携でリスキリングへの取り組みがスタートしています。

日本における取り組み状況

それでは、リスキリングに関する日本の取り組み状況はどうでしょうか。

2022年10月に閣議決定された総合経済対策では、「構造的賃上げと成長力の強化を図り、官民連携のリスキリングと成長分野への投資推進、人への投資の支援パッケージを5年間で1兆円へ拡充」が方針のひとつに掲げられました。

帝国データバンクによると、国内企業のリスキリングの取り組み状況(2022年9月時点)は以下のとおりです。[注5]

  リスキリングの取り組み
取り組んでいる 特に取り組んでいない 分からない
全企業 48.1% 41.5% 10.3%
DX取り組み企業 81.8% 15.0% 3.1%
DX未取り組み企業 32.2% 57.5% 10.3%

DXに着手している企業は、「新しいデジタルツールの学習」や「従業員のデジタルスキルの把握、可視化」など、リスキリングにも積極的に取り組んでいることが分かります。

一方、DX未取り組み企業の場合、約32.2%の企業しかリスキリングに取り組んでいません。これからのDX時代に取り残されないため、企業は人材戦略を見直すことが求められています。BIツールやコミュニケーションツールなどのデジタル技術を活用しながら新たな価値を生み出す「DX人材」へのリスキリングが必要不可欠です。

製造業におけるリスキリングのポイント

製造業はDXに向けた動きが活発化している業界のひとつです。製造業においても、既存の人材をデータサイエンティストなどに転換するリスキリングが注目を集めています。たとえば、日立製作所はグループ企業の全社員約16万人を対象として、DX基礎教育を実施しています。製造業のリスキリングのポイントは以下の2点です。

今後収益が見込める業種を見極める

まずは今後収益が見込める業種を見極め、リスキリングの的を絞りましょう。製造業のDXの第一歩は、スマート工場に代表されるように製造現場のデータ整備と利活用です。製造現場のデータ利活用を軸にしながら、製品価値を高めるために必要なDX人材のモデルを逆算しましょう。

データの利活用を推進する

製造業のデータ利活用は、以下のようなゴールを想定しています。

  • データ活用により、設備投資した機械の能力を有効活用する
  • 仕入れや発注を予測し、適正化する
  • 加工工程における不良品分析を自動化する

たとえば、製造業のリスキリングの事例として、従来の機械系エンジニアをソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストへ転向させるケースが挙げられます。特にデータサイエンティストへのリスキリングは、製造業のDXのゴールにもマッチした人材戦略のひとつです。

そのためには、既存の人材のデジタルスキルを可視化したうえで、データサイエンティストへの切り替えに向けた人材育成プログラムの策定が必要になります。実際に帝国データバンクの「リスキリングに関する企業の意識調査」でも、「精密機械、医療機械・器具製造」の業種の44.1%で、「従業員のデジタルスキルの把握、可視化」に向けた取り組みが行われています。[注6]

まとめ

製造業がDX時代を生き延びるには、従業員一人ひとりがリスキリングに取り組み、データの利活用や整備などのスキルを学び直す必要があります。従業員のリスキリングを推進するため、従業員の学びの機会を創出するプラットフォームを導入しましょう。

CommuRingは、スムーズな情報伝達をサポートするコミュニケーションツールです。教育動画の共有も可能なため、テレワークやリモートワーク中の学習機会を創出できます。
https://commuring.unirita.co.jp/

また、今後製造業で重要度が高まるとされているのがデータサイエンティストです。データサイエンティストの活躍の場を提供するため、データの利活用を効率化するBIツールやデータ活用基盤を整備するETLツールの導入も検討しましょう。
https://waha-transformer.com/


[注1] 朝日新聞:【全文】岸田文雄首相の施政方針演説
https://www.asahi.com/articles/ASR1P65Y3R1NUTFK00Q.html

[注2] 日本生産性本部:労働生産性の国際比較2022
https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M106914/202212151277/_prw_PA1fl_h7ysminO.pdf

[注3] 日本経済新聞:「古いままが最も怖い」デンマークの元祖リスキリング
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA255HN0V21C22A0000000/

[注4] リクルートワークス研究所:リスキリング~デジタル時代の人材戦略~
https://www.works-i.com/research/works-report/item/reskilling2020.pdf

[注5] 帝国データバンク:リスキリングに関する企業の意識調査
https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20221128.php

[注6] 帝国データバンク:リスキリングに関する企業の意識調査
https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20221128.php

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