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グリーントランスフォーメーション(GX)とは?ソフトウェアを活用し、グリーン成長を実現しよう

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経団連が2020年11月17日に「。新成長戦略」を発表し、「サステイナブルな資本主義の確立」に向けた呼びかけを行いました。その柱の1つが「グリーン成長の実現」です。[注1]この記事では、グリーン成長の実現の柱となるカーボンニュートラルやグリーントランスフォーメーション(GX)の説明、多くの企業で実現可能な「IT機器の省エネルギー化」という手段、IT機器のエネルギー効率を改善する方法について解説します。

カーボンニュートラルとは?温室効果ガスを実質的にゼロにする取り組み

環境省はカーボンニュートラルを「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる」取り組みだと説明しています。[注2]2020年10月に日本は「2050年カーボンニュートラル」を表明し、2050年までにカーボンニュートラルの実現を宣言しました。当時の菅総理は、所信表明演説において次のような言葉を使っています。[注3]

我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。

温室効果ガスの排出量を完全にゼロにするのではなく、排出量と吸収量のつり合いがとれた状態を維持することで、温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする取り組みがカーボンニュートラルです。日本がカーボンニュートラルを目指す背景には、二酸化炭素を始めとした温室効果ガスが引き起こす気候変動のリスクが挙げられます。例えば、世界の平均気温は、2017年の段階で産業革命以前(1850~1900年)の水準よりも約1℃上昇していることがわかっています。[注2]また、近年増加している猛暑やゲリラ豪雨などの気象災害も、平均気温の上昇と因果関係があることが予想されています。気候変動のリスクを低減し、持続可能な社会を実現するため、企業レベルでもカーボンニュートラルへの貢献が必要です。 

グリーントランスフォーメーション(GX)とは?経済成長と環境保護を両立させること

グリーントランスフォーメーション(GX)とは、カーボンニュートラルを始めとした環境保護をビジネスの成長の機会ととらえて、経済成長と両立させる取り組みを指します。経済産業省は2022年1月に「GXリーグ基本構想」を発表し、GXの実現に向けて協力する企業を募集しました。そのなかで、経済産業省はGXを「カーボンニュートラルにいち早く移行するための挑戦を行い、国際ビジネスで勝てるような企業群が、経済社会システム全体の変革を」と定義しています。[注4]GXを実現するための具体的な道筋を示したのが、経済産業省が2021年6月に発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。経済産業省は企業を電力部門と電力部門以外に分け、電力部門は再生可能エネルギー、水素発電、カーボンリサイクル(排出した二酸化炭素の回収)、安全性の高い次世代炉の稼働などのあらゆる手段により、脱炭素化を進めながら新規ビジネスを創出するよう求めています。また、電力部門以外(産業・運輸・業務・家庭部門)の企業に対しては、温室効果ガスを排出する化石燃料の利用を減らしながら、業務プロセスの省エネルギー化を求めています。[注5]業務プロセスの変革や、新規ビジネスの創出により、経済成長と環境保護を両立させるのがグリーントランスフォーメーション(GX)のポイントです。 

デジタルトランスフォーメーション(DX)実現後に考えることは「IT機器の省エネルギー化」

新型コロナの感染予防対策として、テレワークやリモートワークの広がり、非対面・非接触で買い物できるECサイトやネットショッピングの普及など、一部領域でのデジタルトランスフォーメーション(DX)が進みました。また、AIやIoT、5Gなどの先端技術を活用し、新しい製品やサービスを生み出す企業も増えてきました。DXの実現後に考えなければならない企業の課題が、「IT機器の省エネルギー化」です。DXを実現する過程でITサービスの利用が増加し、電力需要の増加が想定されます。例えば、クラウドサービスの利用が急増すれば、ベンダーが運営するデータセンターの電力需要が大きく高まります。経済産業省の調べによると、国内のデータセンターの消費電力量は年々増加しており、2018年から2030年にかけて約6倍、2030年から2050年にかけて約133倍に消費電力量の上昇が予測されています。[注6]電力部門以外の企業もITサービスを効率的に利用し、データセンターを始めとしたIT機器の省エネルギー化を実現すれば、DXを推進しながらGXに貢献が可能です。

GXに貢献するにはITサービスを効率よく使うためのソフトウェアが必要

しかし、消費電力量を減らすためにITサービスの契約数を減らしたり、利用時間を制限したりすれば、「経済成長と環境保護を両立させる」というGXの理念に反します。ビジネスの成長をつづけながら、ITサービスを効率よく使うことでデータセンターの消費電力量を減らすことが大切です。経済産業省はGXに貢献するために企業ができることとして、次のように説明しています。[注6]

2050年カーボンニュートラルの実現に向けての省エネルギー化のためには、IT機器自体のエネルギー効率の向上に加え、ソフトウェアがIT機器を効率よく使うことによるエネルギー効率の向上も求められてきています。例えば自動車ではドライバーで燃費が異なるように、ITサービスではソフトウェアがIT機器を効率よく制御することでエネルギー効率が異なります。

電力部門以外の企業も、ITサービスを効率よく使うためのソフトウェアを導入することで、ビジネスの価値を落とさずにGXに貢献できます。 

IT機器のエネルギー効率を改善する2つの方法

ITサービスを効率よく利用し、IT機器のエネルギー効率を改善する方法として、経済産業省は「効率の良いアクセス制御やジョブ実行制御」を挙げています。[注6]今回は、IT機器のエネルギー効率を改善するための方法を2点紹介します。

膨大なデータを高速処理するツールを導入する

アクセス制御とは、システムやデータベースへのアクセスを制御し、効率良く使うための仕組みを指します。アクセス制御を実施すれば、システムの性能や処理時間はそのままで消費電力量を大きく削減できます。実際にデータベースシステムのベンチマークであるTPC-Hを動作させた状態で消費電力量を測定したところ、アクセス制御によって消費電力量が半減しました。[注6]

具体的なアクセス制御の手段としてETLツールがあります。ETLツールとは、社内システムのデータを抽出したり、データウェアハウス(DWH)へデータを連携したりするためのツールです。ETLツールを導入すれば、社内システムのデータへのアクセスを一本化し、なおかつ膨大な量のデータを高速に処理できます。そのため、ETLツールを導入すればIT機器の省エネルギー化に貢献できます。

>> ETLツールとは

ジョブを効率的に実行するツールを導入する

IT機器を効率よく使うためのもう1つの手段が、ジョブの実行制御です。社内に分散したシステムがバラバラにジョブを実行していると、バッチ処理に時間がかかるだけでなく、システムの消費電力量が大きく増加します。そこで、社内システムのジョブを統合管理し、スケジュールを決めて効率よく実行するのが「ジョブの実行制御」という考え方です。

具体的なジョブ実行制御の手段として、ジョブ管理ツールが挙げられます。ジョブ管理ツールとは、社内システムのジョブを一元管理するためのツールです。膨大なバッチを一つひとつ実行していく手間がなくなるため、IT機器のエネルギー効率を改善できます。

>>ジョブ管理・ジョブスケジューラ(運用自動化)に関する課題

グリーン成長を実現するため「IT機器の省エネルギー化」を実現しよう

2020年10月に日本が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、温室効果ガスを実質的にゼロにするための基本方針を発表しました。企業レベルでも、カーボンニュートラルを目指しながらビジネスの成長を継続し、グリーントランスフォーメーション(GX)を実現することが大切です。電力部門以外の企業にもできるのが、「IT機器の省エネルギー化」です。アクセス制御やジョブ実行制御など、ITサービスを効率よく使うソフトウェアを導入しましょう。データセンターの消費電力量を削減すれば、一般企業でもDXを実現しながらGXに貢献できます。


[注1] 経団連:当面の課題に関する考え方
https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/086.html

[注2] 環境省(脱炭素ポータル):カーボンニュートラルとは
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/

[注3] 経済産業省:「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)〜いつ、誰が実現するの?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_01.html

[注4] 経済産業省:「GXリーグ基本構想」を公表し、賛同企業の募集を開始します
https://www.meti.go.jp/press/2021/02/20220201001/20220201001.html

[注5] 経済産業省:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210618005/20210618005-4.pdf

[注6] 経済産業省:ソフトウェアに着目したITサービスのエネルギー効率指標の算定方法が国際規格になりました
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210621005/20210621005.html

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