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モデリング講座2 “良い業務フローと悪い業務フロー(前編)”

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モデリング講座 第二弾です。

前回の話を受け、今回は"良い業務フローと悪い業務フロー"の違いについて話してみます。

業務フローを記述するシーン

私たちは様々なシーンで業務フローを記述します。さて、どんな時にどんな目的で、誰が、誰に対して業務フローを記述するのでしょうか?主な目的に「誰が」、「誰に」を加え、下表のように整理してみました。

(表1 業務フローを記述する目的)

#

タイプ

目的

誰が

誰に

1

業務マニュアル

ある業務を実施する際の手順を記述し、新規業務担当者への説明・引継ぎ、業務の標準化のため

業務の経験者、規定者

業務実行者

2

内部統制

財務報告に関わる部分について内部統制の整備状況を把握するため

被監査会社(内部統制担当部署)

監査人

3

ISO(※1)認証取得

ISO9001:品質マネジメントシステム、ISO14001:環境マネージメントシステムなどを取得し、社内向けの業務品質向上や社外向けの信頼を獲得するため

ISO対象スコープの業務担当者

ISO認証機関

4

ITの業務要件定義

開発ベンダーまたは社内開発者のためにIT開発の背景となる業務内容を伝えるため

開発対象の業務担当者・IT担当者

開発ベンダー、社内開発者

5

アウトソーシングの作業・責任範囲の特定

アウトソーシングのSLA(※2)の規定のため

アウトソーシング対象業務担当者

アウトソーサー

6

業務改善

業務改善のための現状業務の把握・課題の洗い出し、新規業務の検討、新業務の妥当性検証などのため

業務改善担当者

業務担当

(※1) ISO: International Organization for Standardization
様々な分野の国際規格を策定する非政府組織

(※2) SLA: Service Level Agreement
サービスの提供事業者と発注者間で結ばれるサービスの定義、範囲、内容、達成目標等に関する合意内容

業務フローが求められるわけ

そもそもなぜ、業務フローを記述しなければならないのでしょうか?記述対象の「業務」には下記のような特徴があります。皆さんにも心当たりはありませんか?

  • 誰も全体像を把握できていない
  • 詳細は担当者しかわからない
  • ITで実行されている業務の内容はわからない
  • 他の担当者のやり方はわからない
  • 言葉が部署・部門で統一されていない
  • 新しい業務を行う場合、変更を行う場合の影響範囲が見えない
  • 新しい業務手順を現場にうまく伝えることができない

カタチのない「業務」は人により捉え方が様々です。「業務」に対する認識が一致していなければ、前述した目的を達成することはできません。 そこで、捉えどころのない「業務」を明確にするために業務フローを作成するわけです。業務フロー記述の目的は下記の通りです。

  • 関係者が業務の全体像や具体的手順を共有する
  • ITで実行されている業務内容も理解する
  • 担当者や部門をまたがって共通認識を得る、
  • 説明や業務移管を効率的に行えるようにする
  • 業務変更の影響範囲を見えるようにする

「敵(目的)を知り己(業務)を知れば百戦危うからず」というわけです。

良い業務フロー、悪い業務フロー

ただし、単発の狭い範囲の業務改善ならいざ知らず、目的を違わず、素早く達成するためには良い業務フローを記述する必要があります。さて、良い業務フローとはどのような業務フローでしょうか?良い業務フローは下記のような状態である必要があります。

  • 客観的: 誰が見ても同じ解釈で理解できること
  • 一貫している: 記述方法や表現方法が一貫していること
  • 連続している: 業務の始まりから終わりまで情報のバトンがつながっていること
  • 記述が完全: 対象領域が全てカバーされていること
  • 具体的: 実用可能なレベルまで具体的であること
  • 保守性: 継続的な維持管理が容易であること

なんだかコムズカシイですか?しかし、上記のような状態ではない「悪い」業務フローで、例えばITの業務要件定義を行ったらどうなるでしょうか?

  • 主観的: ベンダーが異なる認識でシステム要件を定義してしまった
  • 一貫していない: 異なる様式で記述してあった箇所の開発が漏れていた
  • 連続していない: 請求と入金を紐づける情報がなく、入金の消込に大量の人員が必要になった。
  • 不完全: 最終テストで返品業務を提示していないことに気が付いた
  • 抽象的: 業務フローを見たが内容がわからず、再度ヒアリングする必要がでてきた

よく聞くバグだらけ、納期遅延で、機能足らずのIT開発のデスマーチが発生します。上記は私が見聞きした本当にあった話です。ご愁傷様。。。

さて、後編では良い業務フローを書くためのコツをいくつかご紹介します。

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